立秋という日に、経営者が気をつけたいこと
新暦でいうと8月7日ごろ。これが立秋です。暦の上ではもう秋なのに、体感はまだ真夏のピーク。この噛み合わなさの中に、経営者が見落としがちな注意点が隠れている気がします。
立秋というふしぎな区切り
二十四節気でいえば秋のスタートですが、実際は一年でいちばん暑い時期にぶつかります。名前と体感がまるで合わない、変な節目です。
8月15日はお盆で、終戦記念日でもあります。各地で灯籠流しをして、戦火の犠牲になった方々に祈りを捧げる。ただ暑いだけじゃなく、立ち止まって手を合わせる日でもあります。
近年は気候変動の影響で、日本の気候帯そのものが変わってきた感じがします。もう亜熱帯と言ってもおかしくない。熱中症だけでなく、局地的な豪雨にも気を配らないといけない季節になりました。暦は秋でも、現実はまだ夏。このズレを、まず頭に入れておきたいところです。

冷房の効いた部屋で、静かに体力を失っていく
外は酷暑なのに、オフィスの中はキンキンに冷えている。ここで油断すると、体は「冷え」でやられます。基礎体温が下がると免疫力も落ちる。これがどれくらい怖いことか、意外と知られていません。
夏は夏らしく汗をかいて、代謝を上げておく。これが本来の体の使い方です。ぬるめのお湯にゆっくりつかるのもいい。冷やしすぎない、これに尽きます。
これ、会社の経営にもそのまま当てはまる話だと思うんです。景気がいいときほど、リスクから会社を守ろうとして動きを止める経営者がいます。例えば、売上が伸びているのに新しい挑戦も投資も一切せず、現状維持だけを守る会社があるとします。守っているつもりが、体温を奪われて免疫力を落とすのと同じことが、社内で静かに起きていないでしょうか。
御社は、暑いときにちゃんと汗をかいていますか。涼しい部屋にこもって、知らないうちに冷え切っていないですか。
秋冬に向けて、蓄える時期
立秋を過ぎると「残暑」になります。陽の気がおさまって、陰の気が育っていく時期。この時期の食事は、夏の消耗を補いながら、秋冬に向けてエネルギーを蓄えることが大事だと言われています。
しじみなどの貝類、梨や桃といった果物。トマトやナス、さんまや太刀魚、オクラ。冷やし中華やスパイシーなカレーも、この時期はおいしいですよね。派手さはないけど、体に効く食材ばかりです。
経営でいえば、これは仕込みの時期にあたる気がします。例えば、繁忙期が一段落したタイミングで来期の商品開発や人材育成に手をつける会社と、疲れたからと何もしない会社があるとします。半年後、この差はけっこう大きく出ます。
今の忙しさが落ち着いたら、御社は何を仕込みますか。
涼しくなった途端、仕事がはかどる。そこが危ない
立秋の養生法に導引式というのがあって、体の側面を伸ばして肺を広げる動きをします。涼しさへの切り替えを助けるものだそうです。ちょっとした所作ですが、季節の変わり目に体を整えるという発想は、ビジネスにも応用できる気がします。
この時期になると涼しくなって、仕事もはかどるようになります。いろんなことが順調に運んでいるように感じる。でも、ここが一番危ない。ゆめゆめ調子に乗りすぎませぬよう、というのが正直な実感です。
なぜ順調なときほど危ないのか。単純な話で、うまくいっているときは誰も原因を疑わないからです。数字が伸びているとき、判断が甘くなっていることに本人はまず気づきません。例えば、受注が急に増えて現場が回り始めたとき、体制も見ずに新規案件をどんどん取っていく会社があるとします。半年後、無理がたたって現場が崩れる。よくある話です。
好調の波に乗っているとき、御社はブレーキの位置を確認できていますか。
自社に置き換えると
立秋は、暦の上では秋の始まりでも、体感はまだ夏。このズレに振り回されず、暑いときは汗をかき、涼しくなったら気を引き締める。それだけのことなんですが、実際にやるのは難しいです。
忙しさが落ち着いたタイミングで、来期の仕込みに手をつけられているか。売上が伸びているとき、その理由を自分の言葉で説明できるか。景気がいいときほど、社内のブレーキ役を誰が担っているか。この3つ、一度確認してみてください。
暦はただの目安です。でも立秋という区切りは「ここから風向きが変わる」という合図でもあります。順調なときこそ、足元を見直す。それくらいの慎重さがあってちょうどいい気がします。
・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2023年8月「立秋 十三 / 二十四節気」を再編集)
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