36協定と就業規則の見直し方 中小企業の働き方改革で最初に確認すること
「36協定って毎年出し直すんでしたっけ」「就業規則、10年前に作ったまま触ってません」。こういう相談は本当に多いです。普段の仕事が回っている間は困らないので後回しになりがちですが、労働基準監督署の調査が入ったときや、社員から有給休暇のことで質問が出たときに、慌てて中身を確認することになる会社をよく見てきました。
36協定を出していない会社が今でも珍しくありません
36協定は、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。社員に法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いてもらう場合や、休日に出勤してもらう場合、この協定を労働者側と結んで労働基準監督署に届け出ておく必要があります。届け出ていないまま残業をお願いしている状態は、法律上は違反にあたります。
従業員10人未満の小さな会社ほど、この手続きが抜けていることがあります。忙しい時期だけ少し残業をお願いする程度だから大丈夫だろう、と思っている経営者の方は多いのですが、時間の長さではなく「協定を結んでいるかどうか」がまず問われます。
協定には上限もあります。原則は月45時間・年360時間まで。臨時の特別な事情がある場合に限り、労使で「特別条項」を結べば年6回まで超えることができますが、それでも年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)といった上限があります。この数字は2026年時点の一般的な基準で、業種によって適用時期や例外が異なるため、実際の手続きは最新の様式と公募・通達で必ず確認してください。
36協定は1年ごとの更新が基本です。去年出したから今年は大丈夫、と思い込んで期限が切れたまま残業させている、というのもよく聞く話です。

36協定と就業規則は、そもそも役割が違います
ここを混同している方が意外と多いです。36協定は、法定労働時間を超えて働かせてもよいという許可を労基署から得るための書類です。労働者側の代表と会社が合意して届け出るもので、これがないと残業や休日出勤そのものが違法になります。
一方で就業規則は、会社の中でのルールブックです。36協定を結んで届け出ていたとしても、それだけで社員に「残業を命じる」権限が会社に生まれるわけではありません。就業規則や労働契約の中に、業務上必要なときは時間外労働や休日労働を命じることがある、という規定を置いておく必要があるとされています。ここは判断が分かれやすいところなので、自社の規定がその要件を満たしているかは、社労士に一度見てもらうのが安全です。
つまり36協定と就業規則は、片方だけあれば済むものではありません。届け出る書類と、社内で運用するための根拠、両方がそろって初めて残業をお願いできる状態になります。
上限規制はどこまで許されるのか、特別条項の中身も見ておきます
先ほど触れた月45時間・年360時間という原則は、特に理由がなくても超えてはいけないラインです。忙しい月が続くからといって、なんとなく毎月超えている状態は本来おかしいと考えてください。
特別条項を使うには、繁忙期や大きなトラブル対応など、臨時的で具体的な事情が必要です。「業務の都合上」といった漠然とした理由だけでは足りないとされています。何が起きたときに、どの部署が、どのくらい超える見込みなのか、協定の中に具体的に書いておく必要があります。回数は年6回までという制限もあります。
また、単月や年間の上限だけでなく、複数月をならしたときの平均にも上限が決まっています。この平均の考え方は制度で細かく決まっている部分なので、自社の状況に当てはめる際は、最新の要件を労基署や社労士に確認してください。数字だけ覚えていても、実際の運用でつまずく会社をよく見ます。
届出はいつまでに出す、出し忘れるとどうなるか
36協定は、有効期間が始まる前に届け出ておくのが原則です。原則1年ごとの更新なので、更新のたびに「いつまでに出すか」を社内で決めておかないと、うっかり切れたまま残業をお願いしてしまう状態になりがちです。
出し忘れた場合、その届出前の期間の残業や休日出勤は、法律上の根拠がないまま行っていたことになります。就業規則にきちんと規定を置いていても、協定そのものが届いていなければ話は別です。労基署の調査で見つかれば、是正勧告を受けることになりますし、悪質だったり繰り返していたりする場合は、さらに重い対応に発展することもあります。罰則も法律で定められています。詳しい内容や自社への当てはめは、労基署や社労士に確認してください。
更新をうっかり忘れないためには、有効期間の終わりが近づいたタイミングで社内にリマインドが飛ぶ仕組みを作っておくと安心です。担当者が変わったときに引き継ぎ漏れが起きやすいポイントでもあります。
就業規則の見直しはどこから手をつけるか
常時10人以上の従業員がいる会社は、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。10人未満なら義務はありませんが、あった方がトラブルは減ります。口約束で決めていたルールが、辞めた社員とのやり取りで「聞いていない」と食い違うことがあるからです。
見直しのときにまず見るのは、労働時間、休日、賃金、退職・解雇の4か所です。特に多いのが、実態と規則がずれているケースです。例えば、規則には「始業9時」と書いてあるのに、現場では8時半には作業を始めているのが当たり前になっている、だとします。この差が積み重なると、後から「あれは労働時間だったのでは」という話に発展しやすくなります。
就業規則の見直しは、社労士の先生が中身の作成や労基署への届出そのものを担う専門業務です。RYDEENでは規則の文言そのものを代わりに作ることはしませんが、現状の運用を洗い出して「どこがずれているか」を一緒に整理するところまでは伴走できます。
就業規則に書いておかないと現場が動かせない項目があります
36協定を結んで届け出るだけでは、実は足りません。就業規則の側にも、残業や休日出勤を実際に命じるための土台を作っておく必要があります。具体的には次のような項目です。
時間外・休日労働を命じる根拠になる規定。割増賃金の計算方法と支払いのタイミング。振替休日や代休を使う場合のルール。管理監督者にあたる社員の範囲。始業・終業の時刻、休憩、休日、賃金、退職に関する規定は、就業規則に必ず書いておくべき部分とされています。
36協定の対象となる労働者の範囲と、就業規則で定めている労働時間のルールがずれていないかも見ておきたいところです。協定では対象にしていたつもりの部署が、就業規則の記載とかみ合っていない、というケースも実際にあります。
建設業・運送業・医師の猶予が終わったあと、どう扱われるか
建設業、自動車運転の業務、医師など一部の業種は、上限規制の適用に猶予期間が設けられていました。その猶予は、すでに終わっています。今は基本的に他の業種と同じ上限規制が適用される扱いになっています。
ただし業種によっては、通常とは異なる上限や経過的な特例が残っている場合があります。中身は制度で細かく決まっている部分なので、自社の業種がどう扱われるかは、最新の情報を業界団体や専門家に確認するのが確実です。
猶予が終わったことで、これまで「うちは対象外だから」と後回しにしていた会社が、急に36協定や就業規則の見直しを求められる場面が増えています。猶予終了のタイミングで一度、自社の協定の内容と就業規則を突き合わせておくと、後で慌てずに済みます。
自社に置き換えると
ここまで読んで、自分の会社はどうだったか気になった方も多いと思います。今結んでいる36協定は、有効期間内でしょうか。更新の時期はいつで、誰が担当していますか。特別条項を使っているなら、その理由を「臨時的で具体的な事情」として書けているか、一度見直してみてください。就業規則に、時間外や休日の労働を命じる規定はあるでしょうか。あるとして、実際の働き方とずれていないか。忙しさにかまけて確認を後回しにしている項目があれば、この機会に洗い出してみることをおすすめします。
よくある質問
36協定はどこの労基署に届け出ればいいですか
基本的には事業場ごとに、その事業場を管轄する労働基準監督署に届け出ます。複数の事業場がある会社では、一定の条件を満たせば本社でまとめて届け出る方法も用意されています。まとめて届け出る場合の条件や手続きは細かく決まっているので、対象になるかどうかは労基署や社労士に確認してください。
パートやアルバイトにも36協定は必要ですか
雇用形態にかかわらず、法定労働時間を超えて働いてもらう場合や休日出勤をお願いする場合は、36協定の対象になります。パートだから、短時間だからという理由で協定が不要になるわけではありません。協定の対象となる労働者の範囲は、協定書の中で具体的に定めておく必要があります。
就業規則がなくても36協定さえ結べば残業させられますか
協定を結んで届け出るだけでは十分ではないとされています。就業規則や労働契約の中に、時間外・休日労働を命じることがあるという規定を置いておく必要があります。この規定がないと、残業を命じる根拠が弱いまま運用していることになりかねません。自社の規定が要件を満たしているか、社労士に確認しておくと安心です。
36協定と特別条項付き36協定は届け出る書類が違いますか
特別条項を使う場合と使わない場合とで、届け出る内容や様式の扱いが異なります。特別条項では、臨時的な事情の具体的な内容や、超過する場合の割増賃金率など、通常の協定より詳しい記載が求められます。最新の様式や記載方法は、労基署のホームページや社労士への相談で確認するのが確実です。
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