パラダイムシフト

 パラダイムとは「ある時代や分野において支配的規範となるものの見方や捉え方」なんて言われます。外国語にするとわかったようになるのが現代の日本人です。翻訳語ではなくて、いつも使う日本語でわかることが大事です。たとえば、ローンとかクレジットカードとかいうとなんか高級に聞こえますが、実体は単なる借金ですよね。クレジットカードなんかは、持ってないと貧乏人のように考えがちですが、使い方によっては企業のえじきなって生活の崩壊につながります。「パラダイム」も今どきのはやりでわかったような気になって使う言葉ですが、自分の感覚で「わかる」ことが大事です。

「パラダイム」はいろいろに言われますが、最大公約数をとると「その時代を支配するルール」のことでしょう。「シフト」は移行することですから、「パラダイムシフト」はその時代を支配するルールが他のルールに移行することのようです。ぼくの感覚としては「みんなの思い込みが、単なる思い込みであることに気づいて放り投げられる」ってな感じで「パラダイムシフト」をとらえています。

 15世紀終わりに幕を開ける「大航海時代」において、世界が結びついて世界経済なるものの幕が開きましたました。そして、18世紀にはじまる「産業革命」によって工業社会がその姿を現し、そのままの世の中が今まで続いてきました。人々は朝起きて工場へ行って仕事をして、夕刻になると家に帰って少し休んでまた繰り返しの生活です。工業社会が出現するまでの世界の様子は、主に農業と商業を生業として、人々はその日その日を暮らしていたのでしょう。何せ、工業がないのですからね…

 今「IT革命」によって、時代が大きく変化しようとしています。人々の生活も変化せざるを得ません。工業社会の代表である工場は、今や生産も管理もロボットやコンピューターができる世の中になって来たのです。工業社会の働き方が多様化し、それだけではなくこれまでとは違ったまったく新しい職業が生まれつつあります。ユーチューバーなんて職業はつい何年か前まではありませんでしたが、今では立派な職業です。産業革命によって出現した世の中が今まさにひっくり返ろうとしているのです。

 とくに注意すべきは、人々の時間の使い方が劇的に変化していることでしょう。時間は有限で平等に与えられるものです。時間の貸し借りというものがお金の貸し借りのように生まれるのかもしれません。「モノからコトへ」と言われるのは、こういうことなのかもしれません。無形資産やエネルギーに対する注視も怠ってはなりません。しかし、こういう時に経営者として必要なことは、経営理念や経営哲学といったものを自分自身にしっかり問いかけてみることです。

文章 杉岡 茂