ブルシットジョブ

 前回はサクセストラップの話をしましたが、もう一つ現代において社会を停滞させる大きな原因が見つかりました。「ブルシットジョブ」です。ブルシットジョブとは「くそ役にも立たない仕事」と訳されます。何のために誰のためにやっているのかわからない事務仕事と思ってください。中小企業における会計や経理の仕事も、単に税金の計算に終わってる場合はブルシットジョブと言ってもいいかもしれません。

 18世紀の産業革命によってブルーカラー(現場職)と呼ばれる労働者が生み出され、その後200年の間の産業の機械化によって、彼らの仕事が失われていきました。そして、産業界は大きくホワイトカラー(事務職)の舞台に変わります。ホワイトカラーは直接にモノを産んだりおカネを産みませんが、このホワイトカラーの暴走によって「ブルシットジョブ」が激増します。ブルーカラーの仕事はモノを生産するとか販売するなどお客さんが見える仕事です。一方、ホワイトカラーの事務職ではお客さんが見えません。ともすれば何の目的もないムダな仕事になりやすいですね

 世は第四次産業革命とかIT革命という時代を迎えています。「工業社会からサービス社会へ」あるいは「モノからコトへ」とか「所有から利用へ」とか言われます。この地球上に生まれた人類は、その社会を

①自然からモノを生産する「農業社会」

→②人工的にモノを生産する「工業社会」

→③コミュニケーションを売る「サービス社会」

へと進化?させました。その中で、その流れに乗り遅れた事務仕事も大きなブルシットジョブです。ブルシットジョブは生産性の大きな敵です。つまり働く人の給料は上がりません。

 そして、経済のグローバル化とRPAなどの事務のロボット化が同時進行するグロボティクスGloboticsによって、ホワイトカラーさえもその仕事を失う時代になってきました。ロボットと海外労働者の攻勢にさらされているのです。このことによってブルシットジョブがなくなっていくことになるのでしょうが、とても皮肉なことのように思えます。

文章 杉岡 茂