再  生

「事業の再生」と一口に言っても、そりゃたくさんのことをしなければなりません。それをするのは、他の誰でもなく、社長であるあなた自身です。事業の危機にあっては、いろんな波が押し寄せてきて、何をしなければならないかがわからなくなってしまいます。少し後ろに下がって客観的に見なきゃならない我々サポーターであっても、波に飲み込まれて、何から手をつけていいかわからないことも多々あります。また、業種や状況によって、打つべき手は千差万別です。その時に、常に戻って考えるホームポジションがあります。それは、

  • 設計図→材料集め→作業
  • 優先順位

という基本フォームをチェックしてみる、ということです。

 

再生が必要な危機時であっても、何も心配のない平時であっても、ほんとうはこのことは変わらないのですが、危機のときには、特に落ち着いてチェックすることが必要です。だらだらと出血(赤字を累積)しているけがは、まず止血(返済の組替)をしますが、ひどい場合は止血と同時に輸血(新規の資金調達や売上の増加)をしなければ、死んでしまいます。また、何が原因で出血しているのかの原因を突き止め、患部の見極め(GOODとBADの選別)をしなければなりません。

 

なのですが、私はもう少し基本的な点を重視しています。どんなことをする場合でも、①設計図を描いて(本当にやらなきゃならないことの計画を紙に書いてみる)、必要な材料を集め(ヒト・モノ・カネなど自社の経営資源を思い描いてみる)、そして作業をする(人や物を動かしてみる)、ということと、②ものごとに優先順位をつける、ということをします。つまり、①何をしなければならないかを考えて、さらに、②何から手をつけるかを考える、ということです。何をしなければならないかが分からない場合は、人間は不安ばかりを感じて、先に進むことができません。また、何をすればいいのかというメニューができても、優先順位をつけなければ、人間おかしなもので、やっぱり先に進むことができません。

 

そして基本フォームをチェックした後は、いよいよ

  • やってみる(決断と実行)

ということです。ここは、ただただ「勇気」あるのみです。世界一の武器を持っていても、それを使う知恵や勇気がないならば、その武器は世界一のゴミにすぎません。世界一のゴミには、ホウキとチリトリで勝つことができます。自分の作った設計図に自信が持てなかったり、他にもいい設計図があるのではと疑ってみたりで、前に進めないのが一番良くありません。前に進んでみて駄目だったら、また戻って設計図を修正して別の道を進めばいいじゃないですか。

 

  • と②は経営する技術にかかわるものですが、③は経営する精神の問題です。

経営者は、この「経営技術」と「経営精神」の両方を持つことが必要です。特に危急時には「熱き精神」が必要です。私の仕事は、設計図を作って優先順位をつけることのお手伝いをすることと、そして、決断した社長の背中をちょっとだけ押して差し上げることです。これまでの経験から、再生戦の勝負の行方は、社長がどれだけ不退転の決意をしておられるかということによるようです。そんな社長に対して、私は時として何もできないときもありますが、必ず言えることは、私が社長に寄り添っていることだけはできるということです。