気の話

 昔から「気」というものが、それこそ「気に」なっています。今から20年も前のこと、なぜか急に上海に行きたくなって、わけもわからず人生最初の海外旅行を決意しました。井上陽水の「なぜか上海」そのまんまです。そのはるか前から「気」の正体をあばいてやろうと思ってて、中国は「気」の本場だと理由もなく思っていました。手当たり次第に「気」に関係する場所を求め探しました。

 何度目かの上海訪問で、そのころには大の仲良しになっていた中国人の潘くんが「上海気功研究所」を探し出してくれて、上海の中心部にあるその研究所を訪問しました。この研究所は、国立の東洋医学の大学である「上海中医学大学」の附属機関です。そして、国立の気功研究の機関としては中国国内唯一です。そんなすごい国立の研究機関のトップである所長さんが、なぜか最初の訪問の時から応対してくださいました。潘くんのおかげだと思います。それ以来20年近くずっとお付き合いが続いています。上海に行くたび所長さんをはじめ副所長さんや所員の人たちと食事に行きます。

 今ではもう所長さんも三代目になられます。今現在の李所長さんはとくに我々をかわいがってくださいます。何度か気功の世界大会に招いてくださいました。この気功研究所は気功の研究とともに中国の歴史や伝統を研究する機関でもあります。研究所の人たちと食事をしながら、気功にとどまらず中国の歴史や伝統について本当にたくさん話をしてきました。

 日本にはあちこちに「気」が散らばっています。「気」がついた言葉は中国よりもはるかに多いのではないでしょうか。日本には「気が多い」と言ったら、研究所のみなさんもこのことにはとても興味を持っておられました。

元気 病気 天気 大気 空気

気象 気圧 呼気 気品 景気 

気運 香気 気力 気分 気性 

短気 気持 気配 色気 人気 

健気 呑気 気色 若気 気味

気がする 気になる 気の毒

気が強い 気が重い 気が急く

気が遠くなる 気が移る

気を遣う 気をもむ 気のせい

気がつく 気は心 気を配る

 そういう長年ボチボチの研究の結果、なんとなくわかったことがいくつかあります。まず、「気」は呼吸に関係がありそうだな、ということ。とくに内気功や太極拳は呼吸そのものと言ってもいいかもしれないなあ。次に「気」は本来は自分の外に存在するものではないか、ということ。「気配」とか「そんな気がする」とかいうと、どうも自分の中ではないような… 結局20年かかって何もわかってないのかも。

 そしてまた、日本国内でも「気学」というものと出会いました。先年お亡くなりになりましたが、村山幸徳先生にお会いしてしばらく「気学」を教えていただきました。「天の気」「地の気」「人の気」の「三気学」です。これは東洋古典の粋である「易経」に通じるとても重要な学問ですが、みなさん、「易」もとっても面白いですよ、「易」についてはまた今度…

文章 杉岡 茂