昔は政治の力が経済を引っ張っているのだと何となく感じていましたが、今はなんかちがうぞ。近ごろでは政治の力が弱って、なんか経済が政治を従えているんじゃないかと思うようなことがいくつも起こっています。ウクライナとロシアの戦争にしたって、政治的な力関係よりも経済的な何かがはじまりであったと思われるし、その後も主に経済を背景にして事が動いているという感がぬぐえません。経済というのはとどのつまりはおカネです。あんまりいい傾向ではないかもしれませんね。
政治の世界で当たり前だと考えられていた民主主義、それと密接で不可分といってもいい資本主義、この二つを根底で支えてきた科学主義がゆらいでいるという事実。これらがどこへ向かっているのか皆目見当もつきません。民主主義は本質的に大衆主義に流れやすいこと、資本主義を放置した結果としてヒトとヒトの格差が広がりすぎたこと、科学で全てが説明できると考えた思い上がり、このまま世界が進んでいくとは到底思えません。でも10年前にはそんなこと疑いもしませんでした。
前回のブログで言いました。日本が認めたくないが故に考えないで放っておいたこと。前の時代で「Japan as No1」とまで言われた成功を手放したくないんでしょうね。こういうのを「Success Trap(成功の罠)」っていうんでしょうね。世界の力関係や勢力地図が根っこから変わろうとしているのに、この国はそのままでいたいかのようにしている。そして、日本がいろんな面でいろんな国に遅れをとっていること。
でも、そう悲観することはないのです。私たちの現在の立ち位置をしっかり見つめて認識し、「もののあわれ」という出発点に戻ることができれば、新しい日本が生まれるのです。この国はいつの世もそうしてよみがえってきたのです。自然との共生による再生の力、それはおカネから離れること、心を大事にすること、若い人たちはこれらのことに無意識にでも気づいていると思う。日本はまた再生する。明治維新でちょっと方向を誤ったことでこれだけの痛手を負ったこの国がまた輝きはじめるのももうすぐのような気がしています。
文章 杉岡 茂