DXの行方 ⑵

 中小企業のDXについては、前回お話ししました「ルール&ツール」という視点と、もう一つ「フロント&バックヤード」という視点がとても重要な2つの視点です。「ルール&ツール」については、「ルール」として事業のフレームの再構築が先行すべきであり、新しい事業フレーム=事業のしくみに合った「ツール」を導入するという流れで考えなければなりません。そうでなければDX全体が失敗します。

 DXの失敗の原因で最も多い失敗は、焦ってツールに飛びついた失敗でしょう。まず「ルール」つまり事業フレームを考えることが大事です。ついでながら、次に多い失敗の原因は現場の抵抗です。人は自分の環境が変わることを望みません。ということは、DXを進めようと思えば、若い新しい人材の力を使うことを考えざるをえません。パートさんでもバイトくんでもいいので、若い人の力を使う方法を探しましょう。

 さらに「サクセストラップ」に引っかからないように注意しましょう。「サクセストラップ」とは「成功者の罠」です。昔の成功にいつまでもこだわってしまうことです。世の中がこれだけ変動しているのですから、昔の成功が通用する時代ではないということです。新しい目で世の中と会社を同時に見てみることが大事ですが、実はこれが一番むずかしいことかもしれません。会社の外の人に自分の会社を眺めてもらうのがいいかもしれませんね。

 そしてもう一つの視点である「フロント&バックヤード」ですが、「フロント」というのは生産部門だと考えてください。もうける部門です。一方、「バックヤード」は管理部門つまり非生産部門です。世の中で言われるDXが、「フロント」に役立つDXなのか、「バックヤード」に役立つDXなのかを区別して考えてみると、ちょっとだけDXが身近に思えるかもしれません。でも、いずれにしてもまずは「ルール」つまり事業のしくみを考えることが先です。

 DXを考える場合に、「フロント」であろうが「バックヤード」であろうが、その土台はITであって、社長さんはITで何ができるかを勉強することが大事です。ITはインターネットというシステムを前提としていますから、まずはこの「インターネットの本性」を知っておきましょう。3つあります。

  • 中抜き現象の進行…メーカーとお客さんを直結することができます
  • 少数者を集めることができます  
  • 地域を越えることができる…とくに海外にものを売ることができます

というインターネットの3つの重要なお仕事は必ず頭に入れておかなければなりません。

 いずれにしても、この国で今から起こるDXは爆発的な威力を発揮し、後発の若い会社が先行する会社をあっという間に追い抜くという下克上が時代が始まろうとしています。

文章 杉岡 茂