Radio GaGa & 般若心経

 名曲Radio GaGaはQUEENの曲ですが、歌手Lady GaGaは大のQUEENファンで、この曲から名前をとったそうです。Radio GaGaという曲は、QUEENが生きた時代を切り取った物語、テレビなどのVisualが時代をのっとることへの懐疑とノスタルジーを歌った曲です。映像より音をもっと大事にしようよというメッセージです。容姿に自信のなかったLady GaGaはデビューにあたってそのメッセージを受け取り、この歌に勇気づけられたのではないでしょうか。Lady GaGaはとても歌の上手な歌手です。派手ないでたちや振る舞いに隠れていますが、本当は私の歌を聞いてという祈りやメッセージが、Lady GaGaという名前には埋め込まれています。

 我らがQUEENもLady GaGaと同じように、ビジュアルバンドと思うような姿で登場しました。でもその後の曲の作りかたや活動のしかたを見ていると、俺たちの歌を音を聞いてくれと言いたかったんでしょうね。ビジュアルよりも音を聞いてくれというのは、きっとそれぞれのイマジネーションを大切にしようという願いだと思います。その思いが、デビュー後数年を経てビジュアル全盛の時代を迎えたときに、フレディマーキュリーにRadio GaGaを作らせたのでしょう。

 何日か前のこと、ふとユーミンの昔の歌が耳に聞こえたように思いましたが、あたりを見回しても音の源はありません。でも確かに耳に聞こえたように思えたのです。さらに、ユーミンの歌の背景に誰かの会話が聞こえたような、とともに何だかいい匂いがしたような、希望の匂いが、遠い記憶のような… とうとう歳で幻聴が来たかと思ったりもしたのですが、さてさて仮に幻聴だとしても、これは耳に聞こえているのか、耳で聞いてないとすれば何なんだ… そして、記憶の中で聞こえる音は何なんだ。

 思ったとか気がしたとか言いましたが、これは記憶ではないのか?いろいろ考え始めたらわけがわからなくなりました。あの希望に似た匂いは一体何なんだ。こういうものをぜ〜んぶまとめてイメージというのかもしれません。つまり、バランスのとれた五感とでも言えばいいのでしょうか。五感とは視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚を言います。QUEENはRadio GaGaの中で、視覚だけが強くなっていくと、人が受け身になることに対して警告したのかもしれません。

 この五感に+αの6つについて、仏教の代表的な教典である般若心経は、「眼耳鼻舌身意(げんにびぜつしんい)」とか、「色声香味触法(しきしょうこうみそくほう)」と言っています。この内6つ目の「意」と「法」は人間の「考える」ということに対応するものでしょう。イマジネーションというのはこれらがバランスよく働くことによって生まれるもので、バランスが崩れるとイメージの力はなくなります。このイマジネーションが働かなくなっていちばん困るのは、他人の気持ちが思うことができなくなるということではないでしょうか。

文章:杉岡 茂

写真:伊丸 綾