次に②の側面「国際化」ということを考えてみましょう。社会が「国際化」するとは、海外との間で、モノの交流とともにヒトの交流が増加するということです。明治維新を第一の開国、戦後を第二の開国とすれば、現在は「第三の開国」であって、第三段階の国際化ということになります。なんせ日本の開国は、世界的にも珍しい「鎖国」から始まっています。
そんな日本という国の第一の開国は、「モノの交流」から始まりました。世に言う「文明開化」です。そして、第二の開国は戦後で、今度は「ヒトの交流」が始まりました。日本人が国外へ「海外旅行」することは増えましたが、この段階では海外からの入国はまだまだ自由に入国できる状況にはありませんでした。出国者数はもう長いこと2000万人弱で大きな変化はありません。一方、入国者数は2000年にはまだ500万人に満たない程度でした。出入国者数が逆転したのはわずか5年前の2015年のことで、その後の入国者数の激増は下に見ていただくとおりです。
入国者数 出国者数 (万人)
1995 330 1530
2000 470 1780
2005 670 1740
2010 860 1660
2011 620 1700
2012 830 1850
2013 1030 1740
2014 1340 1690
2015 1970 1620
2016 2400 1710
2017 2870 1790
2018 3120 1900
この数はインバウンドと言われる海外からの観光客の数ですが、これに海外からの就労者、日本に何年か定住する人たちが今後さらに増えてきます。2019年の外国人労働者は約145万人です。
一方、モノの交流で言うと、日本をはじめ先進国においては、今後もデフレが続くことになるでしょう。むずかしいことは抜きにして、日本で100円、ベトナムで10円のものは両国の交流が進めば50円になる、ということは、先進国はデフレで発展中の国はインフレになるということです。このことに、前回の「退役世代の老齢化」と「若年現役世代の少数化」が重なれば、日本経済はデフレが続くと考えておいた方がいいでしょう。
さて、この国際化、どこまでも進んでいくんでしょうね。われわれの世代も考えなきゃいけないことがたくさんあると思いますが、子供たちや若い人たちの生き方はひっくり返るくらい変わるんでしょうね。でもそんな国際化の中で、であればこそ、日本人のこころが大事になると思います。もののあわれとか、敗者の美学とか、もったいないとか、情けは人のためならずとか、日本人が昔から大事に守ってきたものが、今という時代に消えかかっています。日本人はどこかで間違ったような気がします。そんなことを立ち止まって考えさせてくれる、そんな国際化になればいいなあ…
文章:杉岡 茂
写真:伊丸 綾