東洋思想 2

 永いこと中国の古典を読んできた身からすると、じゃあ中国古来の思想とか哲学の最も大切なことは一体何なのか、ということが最近気になっています。「東洋思想の真髄とは?」ってことですかね。ま、はっきりとはわかりませんし、わかるわけがないとも思っています。でも、はっきりわかってきたこともあります。人が生きるのに大事なことが大事なことなんだということです。単なる学問とか単なる考え方にはあまり意味がないのでしょう。

 インドから中国へ、そして日本へ伝わってきた仏教もやっぱり、人が生きる上で大事なことは何かを追い求めました。中国もインドも同じようなことを考えていたようです。それはヨーロッパの人も同じでした。ギリシャ哲学と言われる考え方です。人はどうやったら幸せに人生を過ごせるのか。別の地域で人種も違う人たちが似たようなことを考えてたというわけです。紀元前6〜5世紀という同じ時代に。

代表選手は中国では孔子、インドでは釈迦、ギリシャではソクラテスといった人たちでしょう。いろんな地域でいろいろな考え方がありますが、東洋中の中国の考え方の鍵は「驚くこと」だと思います。とても当たり前なこと、誰も目を向けないことにも驚くことがとても大事なのではないかと思います。これは日本人にもごく自然に受け入れられたようです。国木田独歩の「牛肉と馬鈴薯」という作品にもその影響がうかがわれます。

たとえば、美しい花を見て感動することもありますが、その花が咲くということ自体をよーく考えてみると不思議です。そして驚きます。たとえば、人が何の意図もしないのにその人の心臓が動いていること、そしてそれは波が寄せては返すリズムに同調していること、月の満ち欠けに同調していることなどを知ると、もう驚きです。驚くことの得意な人が幸せに生きているように見えます。

文章 杉岡 茂