第2回言志塾

今回と次回は、国策の中における中小企業の姿を考案してみたいと思います。

【中小企業の実力】

大企業とは、資本金1億円以上の企業を指し、それ以外の 資本金1億円未満の企業を中小企業というものとします。
まず、大企業の数は、全体の1.5パーセントにすぎません。 大企業と中小企業との當業収入金額における割合は、だいたい5.5:4.5であり、法人税額における割合は、6:4であります。 また、1社あたりの営業収入金額に対する法人税額の割合は ほとんど同じであり、さらに、1社あたりで大企業は中小企 業の営業収入金額においても法人税額においても、約80倍 にすぎません。つまり、大企業と中小企業の規模の差を考慮 した上で比較してみると、「全法人1.5バーセントの大企業が 6割の法人税を負担している」とはいっても、中小企業の税 負担が大企業に比べて少ないとは決していえないのですし、営業収入金額や法人税額を単純に総額で比較しても、中小企 業群が大企業に引けをとっているとはいえないのです。つまり、 中小企業は、思ったより頑張っていますし、日本経済にかなり寄与している事がおわかりでしょう。以上は単に量の問題 にすぎませんが、目を質の問題に転じてみると、例えば、技 術の集積度においては、中小企業に軍配があがる業種が圧倒 的に多いでしよう。日本経済は、中小企業を置き去りにしては、 再生することも、より一層の発展を期することもできないの

【国家政策の転換と中小企業経営】

今まさに構造改革が叫ばれ、経済の領域においては、真に 自由に競争できる社会になろうとしているのですが、そのこ との意味を中小企業の経営者は本気で考えなければなりません。 大きいところも小さいところも横一線で競争する社会が到来 するのです。これまで頭を抑えられ続けてきた中小企業にとっては、干載一遇のチヤンスです。しかし、そのチヤンスは、 真に自立した企業が自律することによってのみものにできる のです。大企業に寄りかかって、企業独自の努力を怠った企業に明日はないのです。価値観の多様化により、世の中の流 は時々刻々と移ろい変わります。その時流に乗り切って、会社の理念を変えて行くことこそ、特にデフレ時代には必要な ことではないでしようか。会社の依って立つ文化・伝統たる 根本的な理念は普遍・不変であるとしても、時代の流れに逆らってはいくら努力しても報われることはありません。川の 流れに乗って泳ぐと自力はそれほど必要ありませんが、川の流れに逆らって泳ぐと、いくら力を入れて泳いでも前に進む ことはできないというのは誰しも経験のあるところです。国も変わる以上、何かを変えてみること、大事なことだと思い ます。今後中小企業も自立し、自律することが必要ですが、 企業が自立し自律するために第一に必要なことは、「ノブレスオブリージュ」(高貴なる義務)をもつということでしょう。 いいことも悪いことも、人がやっているからという理由ではしてはいけません。―般より高い次元の義務感から自己の實 任で、何事についても採否を決断することが必要だということです。この点を必要以上に頭にたたき込んでおかないと、 小さいところが自由競争の荒海の中で自立することは不可能 です。第二に、「ブラグマテイズム」(実存主義)の考え方 が不可欠でしょう。簡単にいえば「強く必要とされるものに だけに存在価値はある」という考え方であります。自分の会 社が今なくなったら誰が困るのか。だれも困らないとすれば、 明日潰れてもおかしくないのです。他にも、いろいろなこと は考えらますが、大きくは以上の2点が、今の世を渡る中小 企業に必要な理念ではないでしょうか。

【規制緩和の意味】

まず、全般的に、「規制緩和」の潮流が到来しますが、その場合の「規制」は、経済の領域においては、主に大企業の 国際競争力を高めることに主眼をおいた規制でありました。 そこでは、中小企業は、景気の調整弁という存在におとしめられてきたのです(そういえば、昔の公民の教科書にそのような記述があったなあ)。つまり、日本経済において、中小 企業の主体的立場は、はなから認められていなかったのです。 このことは、法制度上もそうですし、また、悪名高い「行政指導」(指導の内容自体は法律に基づくものではない)においてもそうでした。戦後の目覚しい経済復興のプロセスにおいては、国策としてそういうことが必要であったといえますが、 これは本質的に社会主義の発想であって、そのような発想を 続けることが経済にとってよくないことはすでに歴史が証明 しております。レーガンもサッチャーもいち早くそのことに 気付き、自由主義の経済に方向転換をしましたが、日本はその流れに乗り遅れていたのです。そのような反省から、今まさに構造改革の必要性が叫ばれているのであります。行政に よる事前規制・統制の経済から、事前に規制することのない 自由競争を原則にして、事後的に司法チェックする経済に変容しようとしているのです。

【税務行政における不可思識】

次に、税務行政においてですが、税理士業界と税務調査と いう2点について述べたいと思います。
税理士業界というは、日本最大級の天下り業界であります。 また、税務署には税理士監理課なる部署があり、税理士はあたかも税務署の支配下にあるかのような法制度になっており ます。私は10年来、弁護士登録も税理士登録もしておりまして 、ここ5 ・ 6年は、税理士業務が8割以上を占めているのですが、 弁護士の眼で税理士業務をながめてみると不可解なことが多く 、一言でいえば、税理士業界自体が自立していないように感じられるのです。そのように感ずるのは、以上の2点に起因する のではないかというのが最近の私の思うところです。このような現実の中で、納税者サイドに立って納税者の権利を全う することに全力を上げることなど不可能ではないでしょうか。 そもそも、税理士という存在は、中小企業にとっては、唯一 といっていい相談相手であります。大企業には弁護士や公認 会計士が関与しており、それぞれの専門的見地から企業の権 利を防衛することを考えていますが、中小企業においては、それらの士業が顧問として日常的に関与することはほとんど ありえません。そして、日常的に関与する税理士が、上述のような存在であるとすれば、中小企業はほとんど国家の権力 に対して裸で向き合っているようなものであります。そして、 このようなことが、法制度として認められていること、そのこと自体が問題なのです。日本経済を論じる場合に、中小企 業に発言力がなく、大企業のしかも一部の意見によって舵取りされている現実も、これに連なる当然の帰結でしよう。前稿で述べたごとく、中小企業が日本経済に対して多大な貢献 をしているにもかかわらずにです。そして、このことは、次 に述べる税務調査の現場にも大きく影響するのです。
税務調査において、中小企業は多少の程度の差はあれ、ほとんど丸裸にされることは皆様ご経験のあるところでしよう。 全ての帳簿のみならず、証憑(請求香や領収書等)を実検されるのであります。これに対して、大企業についても同じレ ベルで調査されているとは到底思えません。たとえ1ヶ月の 期間を費やしたとしても、全国に散らばった支店や営業所等 全てを中小企業と同程度に調査することなどとても想像でき ません。しかも、大企業においては、弁護士や公認会計士の 知恵を借りて防衛の手段を講じることができるのです。税務 調査における防衛力の差は、任意調査に対する認識の程度に よって大きく異なります。通常の税務調査は、いわゆる「任 意調査」であって、基本的に協力の程度は、調査を受ける側 の任意によるのであります。しかも、「修正申告」にあっては、 納税者が自発的にすることが前提であり、この修正申告を調 査官が燥通・誘導することは、違法な行為とされております。弁護士や公認会計士にあっては、このようなことがしっかり認識できており、であるがゆえに十分な防衛力を期待できる のですが、残念ながら税理士にあっては、認識できている者の数は僅少であると思われます。

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