第3回言志塾

今回は、前回の話題の固辺を少し掘り下げてみたいと思います。

【構造改革についての考察】

現在、小泉内閣がある決意をもって臨んでいる構造改革に ついて、私は「小さな政府にしたい」という点を評価して、 結論においては賛成しております。しかし、施策の順序には よほどの注意を払う必要があると憂慮しております。順序を間違えると、日本経済が回役不能なほどの大打撃を被るおそれがあるからです。

小泉内閣は、経済面において、リストラ内閣としての性格 を明確に打ち出していますが、その内容は、①規制緩和(行政改革や民営化等)②財政再建(公共投資の打ち切り)③ 不良債権の処理及びペイオフの解禁の3点に集約されると考 えられます。小泉内閣とそしてマスコミもこれら全てを構造 改革の問題と捉えているように受け取れますが、よ一く考えてみると、界の意味における構造改革は、①のみであったように思われます。目的は、官僚支配の打破であり、S本経済 の効率化であったと思います。それが,いつのころからか、 ②及び③が追加され、同列に播造改革の問題として扱われる ようになった。私は、この点・少し穿った見方かもしれない が,何らかの作為を感じるのです。さては、①は官僚の猛反 発が予恕され、はなはだ困雜あるいは不可能であることから、 国民の目先をそらしてしまおう・と誰かさんが考えたのか。 官僚も②と③は許してくれるだろうから、これも播造改革の中に入れてしまえ。こんなことじゃなければいいなと思う今日この頃です。

考えてみるに、①は本来の意味における俱造改革であり・ これは、全速カ・全力投球でやらなければならない性質の問 題でしょう。しかし、②と③の問題は、バブル崩壊の戦後処 理の問題であり、①のような前向きの問題とは性質を異にします。私の考えでは、②と③の問題は急ぐ必要のない、むしろ、 急ぐと失敗するような質の問題であると思います。バブル崩 壊により、体力のなくなった(私の目には出血しているよう に見えます)日本経済にダイエットしろというようなもので、 へたすると死んでしまいます。このように、根本的な性質が 異なる以上、問題を切り離して、さらに全く違った発想方法 で考える必要があると思うのですがいかがでしょうか。

【不況の原因】

当時の大蔵省銀行局長である土田某(この方はつい先ごろ まで東京証弊取引所のトップにおられたと記憶しておりますが) の一片の通連により、バブルが崩壊して10年以上が経過し ました。一番高いもの(不動産)の価格が半分以下になった のです(日本では不動産の所有権は各個人に認められており ますが、しかし、その価格は国が決めてしまっていいようで すから、これって社会主義というのではないでしようか?) から、デフレ(物価が下がること)になり、経済が冷え込んでしまうことは半ば当然のことでしょう(そのことの實任追 及がなされない日本のシステムについては、言いたいこともありますが、本筋をはずれますから別の機会にします)。このバブル崩壊がもろに影響したのは、企粟のバランスシート です。全国的な不励産の値下がりによって、日本全国の企業のバランスシートが壊れたのです。即ち、それまでは十分な 担保価値を有する資産があったはずなのに、19 9 0年の年 始から資産価値が下降を始め、気づいたときには、半分以下 の価値になっていたのですから、企業経営者にとってはたまりません。いつ何時「あなたの会社は債務超過ではないですかJ と言われかねないのですから。債務超過とは破産状態を意味 しますから、これは、企業にとってはまさしく死活問題です。

日本企某はモラルの塊みたいな存在ですから、皆借金の返済という責任ある行動をとりました。即ち、これまでの経済学の根本が崩れたのです。「企栗は利益を最大に獲得すべく動く」という命題が崩れ,今の企業は「何力明でも借金の返済」 という行動をとっております。桂済がうまくいくか否かは、流通するお金の量と速さで決まります。日本の経済は、消費者が金融機問に預金した金を企業が借りて,設備や商品間発に投資して国際競争力を高め、奇跡の復興を成し遂げたのです。世界でも有数の「消費者の貯蓄」性向は変わっていませんが、車の両輪として日本経済の発展を支えてきた「企業の投資」 がなくなってしまったのです。つまり、金融機関に金がじゃぶじゃぷと余っている状態です。貸し渋りは公的資金の投入により改基されましたし、金利が人類史上最低水準であるところから,金余り状態は明らかです。このような状態では、 お金は回らないことになり、即ち経済は回っていかないのです。私は,企業のバランスシートが健全化するまでの期限付きで公共投資は維持すべきだと思います。企業が使わない分を国が国債を発行してでも代わって使わない限り、景気を維持できないと思います。財政出動(公共投資)は効果がないと思わないで下さい。バブルの崩壊から今日まで、日本経済がもってきたのは、財政出動があったからです。皆さんの実感と して、19 9 7年以降さらに景気が惡くなったように思いませんか?無謀にも横本政権が財政出動を止めた年です。この 暴準により,余計な時間と金をかけなければならなくなった のです。現在の財改出動は、人における空気のようなものだ と思われます。なくなるとその命まで奪われかねないけど、 利いていることに気が付かない、そんなものだと思います。

今、我々は、このような経営環境の中で経堂を考えなければなりません。他にも人口減少の問題(これは少子高齢化の結果です)、環境問題(エネルギー問題も含みます)、情報通信問題(IT化)、教育問題等焦眉の問題はたくさんあり ますが、世の中の流れに逆らつた経営は、絶対にうまくいきません。