啓蟄 二/二十四節気

桃はじめて花咲き うぐいす鳴き 鷹化して鳩となる

 新暦3月5日ころ。

 冬ごもりしていた虫が春の暖かさを感じて地中から這い出してきます。引きこもりが開くことを啓蟄といいます。一雨ごとに春の気配が訪れます。雨水の節気から続いて桃の花が咲く時期で、桃の節句などの行事を行います。

啓蟄は二十四節気の第三の節気。春雷が鳴り響き万物が成長する。春の訪れと万物の蘇生をかたどる節気です。このころ、体の中では肝陽の気が上がり、陰血が不足になりがちなので、この時節の養生は陽気の発生と万物の成長ということに留意して、春のように伸びやかで生気溢れる精神と感情、血気を養うことが大事です。

   啓蟄導引式では主に手の陽明大腸経を伸ばす。手の陽明大腸経は人差し指から腕の外側を通って肩へ行き、そこから更に首筋、鼻の横、そして額を通って顎まで連絡する経絡です。息を吸いながら前足部に重心を置くように体をやや前へ倒し、両手は親指を伸ばしながら体の後ろから下へ伸ばし、頭部はできるだけ上へ伸ばす。そして、手の陽明大腸経を回しながら伸ばし、息を吐きながら体を戻す。自分の状況に合わせて左右交互に繰り返します。

   驚蟄になれば天気もすっかり暖かくなる。薄味の食べ物で体の新陳代謝を促進し、肝臓と脾臓の働きを助けましょう。春の気も旬の食べ物も体の中に取り込むものです。何を取り込むか一所懸命に考えるかどうかで体の状態が違うのだとしたら、やっぱり真剣に考えた方がいいですよね。雨水に引き続き桃の節句の時期ですから、蛤ハマグリやネギがいいでしょう。また、花粉症の季節なので、体を温める生姜や暖かいスープを摂取するといいと思います。暖かくなっていく季節なのに気血の流れをよくして、なぜか冷え性対策と同じことをする節気のようです。

文章 杉岡 茂