新年到来

 新しい年が来ました。新年を迎える度に「今年はどんな年になるのかなあ」なんて思います。いつもはっきり見えないうちにいつもの日常が始まってしまいます。自分のことはとくにわからないのかもしれません。「未来が見えたら面白くない」なんて強がっています。そう言いながらも、来年もまた「今年はどんな年になるのかなあ」とつい思っていることでしょう。

 今年は壬寅(みずのえとら)の年です。「干支」は自分を取り巻く環境、「天の気」と「地の気」を示します。今年は、干が「壬」で、支が「寅」です。もう一つ「人の気」は「五黄土星」です。全ての星が自分の本来の位置に戻ります。みなさん、自分の役割を自覚して自分に舞い込むいろんな面倒を面倒くさがらずに引き受けましょう。最後にはその面倒と面と向かって突破しましょう。来年を迎えるときには新しい自分になっていることでしょう。

 最近の書店には未来を読む、つまり予測する本が氾濫しています。こういうのを見ると、ふと不安になります。未来ばかりを見て過去や現在が抜けると、精神を病まないか。将来にばかり希望を持って過去や現在に現実味がないと、人生が充実しないのではないか。人生を生きるコツはやっぱり「今ここ」を生きることではないか。

 そうは言っても今のご時世、時代の変化に合わせて自分も変化していかないといけません。未来を見ないと生きづらいのも確かです。少し前を見て少し前を読んで生きるのが必要なことですね。どうすればいいのか。ぼくたちは今をここで生きています。やっぱりこれが基本ですね。今ここを基地にして未来を読むことはできないか。きっと舟を漕ぐ人になるというイメージなんでしょうね。舟を漕ぐ人は必ず後ろ向きですね。通って来た道を見て今いる位置を測りつつ前に進みます。

 過去を学び、足元をしっかり自分の目で見る。そして、過去から今を見ているその視線を延長して未来を見る。そんなところですかね。もちろん足元をしっかり見つめることが一番大事なことです。それと同じくらい大事なことは過去を学ぶことでしょう。近い過去は自分の歴史の上で思い返すことができます。自分の歴史を土台にして過去を思い返すことはとても大事なことです。何歳の頃にあんなことがあったなあ、なんて。これに対して、遠い過去は本や古典を読むしかないですね。とくに古典には、長年の間に日本人や人類の智恵がたくさん詰まっています。

 「未来を読む」とは、つまり「過去を読んで今を見つめること」かもしれません。ぼくが自分の未来を毎年読めないのは、自分の過去を読んで今を見つめるのが怖いからかもしれません。還暦を迎えて新しい年が始まります。そろそろ自分の人生まとめて落ち着く歳かな。いや、まだまだジタバタするのかな。

文章 杉岡 茂