最近強く思うのは人の頭が止まった、ということです。思考が停止してしまったように思うのです。コロナの爪痕ですかね。何をするにも「コロナじゃけえしょうがないよね」で話が終わることがなんと多いことか… これは危ない、と真剣に思っています。
「人間は考える葦である」とは大哲学者パスカルが随想録パンセの中で言った言葉です。葦という植物はとても弱い存在の象徴ですが、人間は弱いが考えることができる。考えることは人間のみに与えられた強力かつ尊い武器です。人間の本質を見事に簡単な言葉で言い表していると思います。人間は考えることをやめたらダメなのです。各個人それぞれが考えることをやめて、世間に合わせ流ようになることがポピュリズム大衆主義というもので、この中でナチズムなどの凶悪な時代傾向は生まれたのでしょう。
この思考停止の傾向は特に地方において顕著だと感じています。コロナ前からそういう傾向はありましたが、都会と地方の経営環境の差はずいぶん縮まって来たように思いますが、コロナによっていっそう加速しました。大会社の経営者からフリーランスまで「別に東京じゃなくてもいいじゃん」と思っている人がほとんどだと思います。にもかかわらず、地方の経営者の「エンタープライズ」は眠ったままだという感覚が強いのです。東京の経営者はコロナなんかお構いなしの前に進もうとしている印象を強く受けますが、地方ではコロナを言い訳にしている経営者が目につきます。
「エンタープライズ」とは冒険心とか進取の精神とか言われます。ぼくは「前進」と言い換えるとピッタリくると思っています。今どきはアントレプレナーとか言われますが同じことでしょう。今の時代企業経営者が「エンタープライズを持ってしっかり考える」ことをすれば大きなチャンスがたくさん転がっています。後継者のいない会社を買うこと、優秀な留学生を次世代の経営者として育てて将来的には海外へ乗り出すことなど、コロナ禍の中でもできることは限りなくあります。とくにDX(デジタル技術を使ってビジネスを変革すること)にちょっとだけでも取りかかると、時代を先取りする売り方にたどり着くかもしれません。
エンタープライズ=前進の「はじめの一歩」は自分で自分にかけているリミッターをはずすことです。都会の経営者と地方の経営者の違いは、みんなでリミッターをはずすことを都会の経営者はやっているということの一点に尽きると思います。地方でもそういう空気が流れ出すといいですね。
文章 杉岡 茂