Time, Don’t fly away!

 去年還暦を迎え、その前日に初孫を授かったわけですが、こうなると老け込まないように気をつけなければいけないと思うようになりました。健康とか認知症対策とかいろんなことはあるのでしょうが、今一番気になっているのは時間の感覚です。老いに関するすべてのことがらが時間というものに集約されているような気がします。つまり、時がすぎるのが早く感じられるようになったということです。

 「60歳過ぎたら早いよ」とか「65歳が境であとはこれげ落ちるように時間が過ぎるよ」とかいうその年代の人たちの言葉は今までたくさん聞いてきました。嗚呼、あれ本当だったんだ! 眠りが浅くなるとか腰が痛いとかというよりも時間が早く過ぎていくことは、人を老いさせる一番の毒なのかもしれないと思う今日この頃です。

時よ、飛んで行くことなかれ

 切なる願いです。あと何回晩ごはん食べられるんだろうと思うと気に入ったものしか食べたくないとか、こんなに本買い込んで死ぬまでに読めるだろうかと選ぶのに慎重になったりとか。このごろは、若いころとはちょっと違う生活になってきたようです。

 自分一人の時間をさらに一層大切にするようになった気がします。もちろん孫と遊ぶ時間も楽しいですよ。でも、一人で自分の頭の中の「精神の宮殿」で自在に遊ぶのは、何にもまして幸せです。これを僕は「慎独の幸せ」と呼びます。「ひとりを慎む」と書きますが、慎むという字は「大事にする」ことを表し、ひとりの時間と空間を大事にすることを「慎独」といいます。この慎独があって初めて他者との関わりもうまく行くものだと思います。

 「慎独」っていいますが、具体的に何をしているかというと、古典を読んでいることが多いですね。最近はNetflixで海外ドラマを見ることも多いですね。知らないことを知ること、知ってることをじっくりもう一度考えてみること。古典の著者がすぐそばにいて気軽に会話を楽しんでる、そんな感じかな。今日は家に帰ったら、吉田松陰と日本の将来について語り合います。

文章 杉岡 茂