世の中の流れ  

社長の意識 シーズン2

 中小企業の社長さんたちに、今この時に強く意識していただきたいことがあって、シーズン2です。秩序が乱れて下克上の戦国の時代を勝ち抜きたい社長さんは、とくにお聞きください。とにかくキャンバスに入りきらないくらいの大きな絵を描いてください。自分のリミッターをはずしてください。今までの考え方では勝ち抜くことはできません。そういう意味では、今回の事業再構築補助金は恵みの雨ですね。

 さて、キャンバスに入りきらないほどの絵を描くには、まずイメージが必要です。絵の腕前とか道具などは、イメージのず〜っとあとのことです。経営技術的にいうと、まず「戦略」があって、そのあとに「戦術」がくるのです。この「戦略」はとどのつまりは情報戦です。もう少し下品な言い方をすると諜報戦です。諜報というのは情報を操作することです。いずれにしても経営に関する情報戦は世の中の流れを見つめることです。

 これだけ世界中で世の中が変化するのは、産業革命以来のことです。産業革命により現出した工業社会から、IT革命によってサービス社会とかコミュニケーション社会とかへ移行しつつあります。世の中の様子もすっかり様がわりして、パラダイムシフトなどといわれています。人の生き方、生活のしかたも大きく変わろうとしています。それに合わせてビジネスのやり方や業務の方法を変えないといけません。何もしなければ負け組です。今社長さんがやらなければならないことは「会社の外に出て歩き回って、フレッシュな情報を得ることで世の中の流れを肌で感じる」ことです。身に覚えのあるイメージがなければ、大きな絵を描くことができません。

 さて、世の中の流れを見る場合には、時間と空間を意識しましょう。歴史と地理といってもいいかもしれません。まず空間については、アジアの中の日本という意識が大切です。アジアは、中韓台とASEANという二つの相異なるマーケットがあるという認識をもつ必要があります。そして、このマーケットはいずれも、今後しばらく世界経済の中心地点として動くことになります。「国民一人当たりのGDP×人口」を注視しましょう。

 時間については、2020年6月から7月に3回にわたって「時代の変化」について書きましたが、社長の意識をどこに持つといいかという点に絞ってみましょう。今現在という足下と今は過去という過ぎて来たところをしっかり見ながら、しかもその現実に大して文句を言わずに受け入れることが大切なのです。単に未来をいうことは単なる予測推測にすぎません。占いと同じです。川を行くボートは必ず後ろ向きでこぎますよね。時代の流れを知るのも川の流れを知ることに似ているかもしれません。

 そういう意味で足下を見つめると、若者のマインドがいろんな面で大きく変化しています。仕事の面で見ると、フリーランスなどといっている変化です。英語にすると実体が隠れてしまいますが、大きな会社にずっと勤めるのはいやとか、給料より休みが欲しいなどがフリーランスの実体でしょう。一方、変わってないもの、あるいは変えてはいけないものもあるでしょう。国際化する中で、日本が大事にしなければならないもの、すなわち日本人が誇れるものもたくさんあります。「もののあわれ」なる感情やもの小型化する技術などの無形資産もたくさんあります。「文化と文明」の嗅ぎ分けがカギをにぎるような気がしています。

文章 杉岡 茂

写真 伊丸 綾