役員保険をどう選ぶか。一覧にして初めて見えること

保険会社の担当者に勧められるまま、何年もかけて入った保険が数本ある。そんな会社は少なくありません。相談に来た社長も、契約書を全部並べてみるまで、自分がどれだけの保障を持っているのか把握していませんでした。一覧にしてみると、見えてくるものがあります。

何のために入ったのか、契約ごとに書き出す

ある建設会社の社長から、役員保険の相談を受けたことがあります。保険証券を机に並べてもらうと、五本、六本と出てきました。担当者が変わるたびに一本ずつ増えていったようで、社長自身、何のために入ったのか思い出せない契約もありました。

まずやるのは、契約ごとに目的を書き出すことです。退職金の原資にするつもりだったのか。借入をするときに、銀行から加入を求められたのか。それとも、万が一のときに遺族へ渡すためのものか。この三つは、似ているようで中身が全然違います。

退職金のためなら、社長が退職する時期に解約返戻金が高くなっているかを見ます。借入の担保なら、返済が終わるまで保障が続いているか。遺族のためなら、保険金の額そのものが足りているか。目的が曖昧なまま契約が増えると、どれも中途半端になりがちです。

こういう相談はよくあります。一本一本は担当者の説明に納得して入ったはずなのに、並べてみると重複していたり、逆に抜けている保障があったり。まず一覧表を作ることが、整理の出発点になります。

解約返戻率のピークを並べると、出口が見える

保険にはそれぞれ、解約したときに戻ってくるお金の割合が一番高くなる時期があります。これを一覧で並べると、いつ何を解約すればいいのか、出口の順番が見えてきます。

加入から五年でピークが来る契約もあれば、十五年、二十年とかかる契約もあります。バラバラに入っていると、ピークの時期もバラバラです。退職の予定年から逆算して、そこに合う契約が本当にあるのか、確認する必要があります。

ピークを過ぎると、返戻率は下がっていきます。放置している契約が、実はもうピークを過ぎていたということも珍しくありません。一覧表に加入年とピークの年数を書き込むだけで、優先して見直すべき契約が分かります。

経理処理は加入時期の税制で変わっている

保険料をどう経理処理するか、損金にできる割合は、税制改正のたびに変わってきました。同じような保険でも、契約した時期によって扱いが違うことがあります。

古い契約と新しい契約が混ざっていると、決算のときの処理も複雑になります。担当の税理士が今どう処理しているか、一度確認しておくと安心です。

損金にできる割合は、保険の種類や契約時期で決まる部分が大きく、社長の判断だけで変えられるものではありません。ここは「使えます」と言い切れる話ではなく、使える場合があるので、必ず税理士に確認してください。

受取人は会社か個人か。渡り方も保障の過不足も変わる

保険金の受取人が会社なのか、個人なのかも、契約ごとに確認しておきたいところです。同じ保険金額でも、受け取る先が違うと、そのあとの税金の扱いが変わってきます。

会社が受け取る契約なら、退職金の支払い原資に使うのか、運転資金に回すのか。個人が受け取る契約なら、遺族の生活費として十分な額なのか。目的に照らして、もう一度確認します。

ここまで整理すると、足りない保障と重なっている保障が見えてきます。例えば借入の担保のための保険が二本重なっていて、退職金のための保険が一本もない、といったケースです。仮に借入残高が五千万円の会社だとすると、担保に必要な保障は本来一本で足りるはずです。

重なっている分を減らして、足りない分に回す。それだけで、保険料の総額を増やさずに保障のバランスを整えられることもあります。ここも金額の判断が絡むので、保険の担当者と税理士、両方に相談しながら進めるのが安全です。

保険A 5年目ピーク 保険B 15年目ピーク 保険C 20年目ピーク 加入 25年目 解約返戻率のピークは契約ごとに違う

自社に置き換えると

自社の保険証券を、今すぐ全部出せるでしょうか。何本あって、それぞれ何のために入ったのか、契約ごとに答えられるでしょうか。解約返戻率が一番高くなる時期は、いつ来るのか。受取人は会社になっているのか、社長個人になっているのか。棚卸しをしてみると、思っていたのと違う答えが出てくるかもしれません。

保険は、入るときよりも、途中で見直すときのほうが手間がかかります。だからこそ、一覧表にして年に一度でも眺める時間を作っておくと、いざというときに慌てずに済みます。まずは証券を机に並べるところから、始めてみてください。

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