人口が減って、何がそんなに困るのか

少子高齢化はまずい、とみんなが言います。でも子どもを何人持つか、そもそも持つかどうかは、本人が決めることです。国にとやかく言われる筋合いはないし、産めとか産むなとか言われたら、それはもう人権の話になります。孫が生まれて、あらためてそのことを考えてみました。

人口減少は、そんなに悪いことなのか

少子高齢化、少子高齢化って、テレビも新聞もずっと言い続けています。まるで国全体が病気にかかったみたいな言い方です。でも一回立ち止まって考えると、子どもを持つかどうかは個人の自由で、国が強制したり制限したりしたら、それこそ人権侵害です。

じゃあなんで「問題だ、問題だ」と言われ続けるのか。ここがずっと引っかかっていました。結論から言うと、これは人口そのものの話じゃなくて、国のあり方の話なんだと思います。

ここで出てくるのが、資本主義という言葉です。日本という国が選んでいる経済の仕組みそのものが、人口が増え続けることを前提にできている。そこに気づくと、話が少し見えてきます。

資本主義は掛け算で経済を測る

資本主義というのは、経済がずっと大きくなり続けることを求める考え方です。売上は単価かける数量で決まります。数量というのは結局お客さんの数のことで、人口が増えればお客さんが増えて、売上は自然に伸びていきます。

経営をやっていると、この掛け算から逃げられません。銀行からお金を借りるときも、株を持ってもらうときも、「来年はもっと大きくなります」という前提で話が進みます。人口が増え続けることは、この前提を後ろからずっと支えてくれる、いちばん楽な土台だったわけです。

例えば、毎年百人ずつ人口が増えていく町があったとします。何もしなくても、そこのパン屋さんの売上は少しずつ伸びていきます。お客さんが自然に増えるから当たり前です。逆に人口が減っていく町だと、同じだけ稼ぐには、一人のお客さんにもっと買ってもらうか、よそから客を奪ってくるしかありません。けっこうしんどい話です。

ここで一度、自分の会社の数字を思い浮かべてみてください。今の売上計画、実は「お客さんの数はこのままか、増える」という前提で組んでいませんか。

大量生産・大量消費・大量廃棄というからくり

資本主義にはもうひとつ、大事な特徴があります。大量生産・大量消費、そして大量廃棄です。たくさん作れば一個あたりのコストは下がって、儲けが増えます。

例えば、同じ機械で椅子を百脚作るのと、一万脚作るのとでは、一脚あたりの材料費も型代もまるで違います。たくさん作ったほうが安く作れて、儲けも出ます。規模の経済というやつです。

でも、たくさん作った椅子を売り続けるには、みんなにたくさん買い続けてもらわないと困ります。壊れても直して長く使われたら、次の椅子が売れません。だから修理するより、捨てて買い替えてもらうほうが、資本主義にとっては都合がいいんです。

この国には「もったいない」という美しい言葉があります。物を大事にする、直して使う、そういう感覚です。でも聞くところによると、これは他の国ではあまり見られない、けっこう珍しい心象らしいです。資本主義の理屈からすると、「もったいない」はむしろ都合の悪い言葉なんだと思います。

資本主義がまわす歯車 大量生産 大量消費 大量廃棄 儲けが増える

年寄りには手厚く、子どもには冷たい

資本主義の良し悪しは、ぼくにはわかりません。ただ、人口の減少を本気で止めたいなら、考えなきゃいけないことは山ほどあります。

この国はずっと、年寄りにはお金をかけて、子どもにはあまりかけてきませんでした。なんでかと考えると、身も蓋もない話ですが、子どもには選挙権がないからじゃないかと思うことがあります。票にならないところには、お金が回りにくいものです。

教育にもっと国のお金を使ったらどうかと、ぼくは思います。今の学校教育の荒れ具合を見ていると、正直目を覆いたくなります。学校のやり方そのものを、根本から変える時期に来ている気がします。

自社に置き換えると

ただ、ここまで書いてきて、いちばん大事なのはお金の話じゃない気がしてきました。赤ちゃんを育てている親夫婦への「まなざし」だと思うんです。電車やバスで赤ちゃんがぐずったとき、まわりの人がどんな目でその家族を見るか。優しいまなざしを送るのに、お金は一円もかかりません。孫が生まれて、あらためてそのことを思い出しました。

自分の会社に置き換えて考えてみます。子育て中の社員が急に休むとき、まわりは舌打ちしていないでしょうか。次の世代を育てることを、日々の忙しさを理由に後回しにしていないでしょうか。自社の商品やサービスは、直して長く使ってもらうものになっているでしょうか、それとも使い捨てを前提にしていないでしょうか。

人口が減る理由を国のせいにするのは簡単です。でも、まなざしを変えることだけは、明日から、自分の会社でもできます。それぐらいは、ぼくらの持ち場でやっていきたいと思っています。

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

RYDEENについて

・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2023年5月「少子高齢化と資本主義」を再編集)


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