よその得意技を借りる前に、決めておきたい3つのこと

「オープンイノベーション」ということばを、最近よく見かけます。横文字にすると偉そうですが、やっていることは意外とシンプルです。自分の得意技を、一度外に出してみる話です。

得意技を、いったん外に放り出してみる

技術やノウハウ、データみたいな無形の資産を、会社の中に抱え込まない。これがオープンイノベーションの基本の考え方です。なぜこれがうまくいくのか。情報って、使われないと磨かれないんです。社内で大事に抱えている間は、実際の現場で試されることがない。誰かに使ってもらって、初めて粗が見えたり、思わぬ使い道が見つかったりする。進化した形で、自分のところに戻ってくるわけです。

例えば、御社が持っている配送のノウハウを、まったく違う業種の会社に使ってもらったとします。向こうの現場特有の事情で、こちらが想像していなかった使われ方をする。それで効率が上がって、その知見がまた御社に戻ってくる。情報を出し惜しみしていたら、こういう循環はまず起きません。

RYDEENでは、これを「ユニット事業」と呼んでいます。他社の得意技と自社の得意技を結びつけて、新しい事業を一緒につくる試みです。相性のいい相手を見つけて、お互いの得意なところを出し合う。言うのは簡単ですが、やってみると結構難しいものです。

仲間は会社じゃなくてもいい

得意技を解放して、誰かの力を借りる。相手は同業種でも異業種でも構いません。ただ、相手は会社に限らないというのが面白いところです。最近よく言われる「ヨソ者ワカ者バカ者」ということば、新しいことを生み出すのはそういう存在だという話です。素人の目、学生バイトの目、クレーマーの目。社内にずっといると見えなくなるものを、外の人はすぐに指摘してきます。

中でもお客さんの目は、本当に大事にしないといけません。毎日現場で同じ仕事をしていると、どこかで慣れが生まれます。慣れは効率を生みますが、同時に盲点もつくります。その盲点を見つけてくれるのは、たいてい社内の人間ではなく、外からふらっと来た人です。

御社では最近、社員以外の人から商品やサービスについて意見を聞く機会、ありましたか。お客さんの何気ない一言とか、取引先の若手の違和感とか。そういう声をちゃんと拾える仕組み、あるでしょうか。

テーマ・共通言語・ゆるやかな結合という3つの条件

ユニット事業を始めるには、まず「テーマ」が必要です。中小企業の場合、前提になるのは地方経済です。都市の経済を前提にしたテーマを選ぶと、たいてい失敗します。理由は単純で、中小企業が持っている資源や人脈、信用は、地元に根を張っているからです。都市型の発想を持ち込んでも、足場がないまま戦うことになります。

例えば「観光」というテーマを立てたとします。交通手段、宿泊、食事、お土産。それぞれ得意技を持つ会社が集まって、ここに「流通」が結びつくと面白くなります。とくに南北をつなぐ流通は、日本にはまだあまりありません。テーマがはっきりすると、そこに仲間が自然と増えていきます。

次に必要なのが「共通言語」です。複数の会社が集まると、意思がうまく通じているつもりでも、実はズレていることが多い。経営者なら誰でも口にする「戦略」と「戦術」ということばも、使う人によって意味がバラバラです。RYDEENでは、戦略は戦場の設定、戦術は武器の選定という意味で使うことを徹底しています。

余談ですが、日本の中小企業の社長さんたちは、戦略についてはもっと勉強したほうがいいと思います。一方で、戦術はめちゃくちゃ得意です。自分の会社の強力な武器に、意外と気づいていない社長さんも多い。他社と組むというのは、自社の武器に気づくいい機会でもあります。

テーマ 共通言語 ゆるやかな 結合 端っこを作らず、また自社に戻ってくる

最後に必要なのが「ゆるやかな結合」です。それぞれ独立した会社の集まりですから、全員が存分に力を発揮しないと意味がありません。株式会社どうしの共同経営だと、株数によるパワーゲームになりがちです。株を少ししか持たないメンバーが無責任になって、ユニット事業には向きません。話し合いでルールを決める合同会社のほうが、それぞれが力を出しやすいでしょう。

自社に置き換えると

御社の得意技、社外に出したことがあるでしょうか。抱え込んでいるノウハウ、実は誰かに使ってもらったほうが伸びるかもしれません。地元の経済の中で、御社と組んだら面白いことができそうな会社、心当たりはあるでしょうか。それと、御社が無意識に得意になっている戦術、ちゃんと言葉にできているでしょうか。

「情けは人のためならず」「金は天下の回りもの」。昔から日本人は、こういう輪や和をずっと大事にしてきました。ユニット事業というのは、結局そういう古い知恵を今の会社のかたちに合わせただけなのかもしれません。端っこをつくらない循環。ぼくはこの考え方、中小企業にこそ似合うと思っています。

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

RYDEENについて

・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2022年1月「ユニット事業」を再編集)


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