新年、未来を読む前にぼくがやっていること

正月になると、毎年同じことを考えます。「今年はどんな一年になるかな」って。考えても大抵、答えは出ないまま、いつもの日常が始まってしまう。経営者のみなさんも、きっと似たようなことを思っているんじゃないかな。

干支のせいにして、今年も面倒を引き受ける

今年は壬寅の年だそうです。干支って、自分を取り巻く環境を示すものらしい。天の気が「壬」、地の気が「寅」。もうひとつ、人の気というのがあって、今年は五黄土星。全部の星が自分の本来の位置に戻る年なんだとか。

占いを信じるかどうかは別にして、この話には使える発想が一つあります。自分の役割を自覚して、舞い込む面倒を面倒くさがらずに引き受ける。これ、経営でも同じです。会社が大きくなるほど、面倒な仕事は上に集まってきます。取引先とのこじれた話、辞めたいと言い出した社員の本音、数字が合わない月の帳簿。全部、できる人のところに回ってくる。

例えば、ある製造業の社長が、毎年この時期に「今年はどの面倒を自分が引き受けるか」を自分なりに決めているとします。逃げずに正面から向き合った面倒は、翌年には会社の強みに変わっている。そういうこと、実際によくある気がします。

今年、あなたのところに回ってきそうな面倒は何でしょう。そこから逃げずにいられるか。それだけで一年の終わりの景色がだいぶ変わる気がします。

未来を読む本が並ぶ書店で、ふと不安になる

最近の書店には、未来を予測する本がたくさん並んでいます。どれも威勢がいい。でも見ているとふと不安になる。未来ばかり見て、過去や今が抜けていくと、人はおかしくなっていかないか。将来にばかり希望を持って、今に現実味がないと、人生は充実しないんじゃないか。

経営の話に置き換えると、これは中期計画ばかり立派で、今月の資金繰りがぐらぐらしている会社と同じです。未来の数字は美しいのに、今の現場がついていけていない。社長だけが先を見ていて、社員は今日の仕事に追われている。そのズレが大きくなるほど、計画は絵に描いた餅になっていく。

人生を生きるコツは、結局「今ここ」を生きることだと思います。会社を続けるコツも、たぶん同じです。

とはいえ、今の時代、変化に合わせて自分も変わらないといけません。未来を見ないと、これも生きづらい。少し前を見て、少し先を読んで生きる。そのバランスが必要なんでしょうね。

舟を漕ぐ人は、後ろを向いて前に進む

どうすればいいのか。ぼくたちは今をここで生きています。これが基本です。今ここを基地にして、未来を読むことはできないか。考えていて、ふと思いついたのが、舟を漕ぐ人のイメージです。

舟を漕ぐ人は、必ず後ろ向きです。通ってきた道を見て、今いる位置を測りながら、前に進みます。前を見て漕いでいるわけじゃない。後ろを見て、今の位置を確かめながら、進む方向を決めている。

例えば、来年の事業計画を立てるとします。何も見ずに「3年後はこうなりたい」と前だけ見て描いた計画と、過去5年の決算と現場の変化を見返してから描いた計画。どちらが机の上の絵で終わらずに現場で動くか。たぶん後者です。

過去を学んで、足元をしっかり自分の目で見る。その視線をそのまま延長して、未来を見る。足元を見ることが一番大事で、同じくらい大事なのが過去を学ぶことだと思います。

近い過去は自分の歴史、遠い過去は古典から借りる

近い過去は、自分の歴史の中で思い返すことができます。何歳の頃にあんなことがあったな、あの決断は失敗だったな、あれは今でも正解だったと思う。自分の歴史を土台にして振り返ることは、とても大事なことです。

会社で言えば、創業からの決算書や、過去のヒット商品とコケた商品の記録がこれに当たります。近い過去は自分たちで持っている。振り返る気になれば、いつでも読み返せる。

遠い過去は、そうはいきません。本や古典を読むしかない。古典には、長年かけて積み上げられた日本人や人類の智恵が詰まっています。経営の本で言えば、何十年も前に書かれたことが、今の課題にそのまま効くことがよくあります。

自分の会社の歴史だけを見ていると、どうしても視野が狭くなります。もっと遠い過去、もっと遠い場所の智恵を借りてくる。その二つを両方持っている経営者は、やっぱり強いと思います。

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自社に置き換えると

さて、ここまで書いてきた話を、自分の会社に当てはめてみてください。

自分の会社の近い過去、直近数年の決算や判断を、ちゃんと振り返る時間を取っているでしょうか。振り返らずに、来年の計画だけを前のめりに立てていないでしょうか。

今年、自分のところに回ってきそうな面倒な仕事から、逃げずに向き合う準備はできているでしょうか。

遠い過去の智恵、古典や先人の経営の知恵を、どこかで借りてきているでしょうか。それとも、全部自分の経験だけで判断しているでしょうか。

還暦を迎えて、新しい年が始まります。そろそろ自分の人生をまとめて落ち着く歳かな、とも思うし、いや、まだまだジタバタするんだろうな、とも思う。たぶん両方が本当です。今年も、面倒を引き受けながら、後ろを見ながら前に進もうと思います。

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

RYDEENについて

・文 杉岡 茂(初出:逍雲夜話 2022年1月「新年到来」を再編集)


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