大雪に「補う」経営者は、春に虎を打つ
大雪(たいせつ)と言われても、正直あんまりピンと来ないですよね。二十四節気のひとつで、新暦だと12月7日ころ。日本はまだそんなに雪深くはならなくて、太平洋側なんかむしろ晴れの日が続くんですが、北風だけは確実に強くなってきます。年末の足音が、体に先に聞こえてくる時期です。
大雪は「補う」季節
中国のことわざに「冬に入って補えば、春になって虎を打つ」というのがあるそうです。大雪はこの「補う」の好機、と言われています。補うというのは、不足を満たすとか、埋め合わせるとか、そういう意味です。破れたところ、ほころびたところを、休めたり直したりする。そういう感じでしょうか。
ちょうどこの時期、12月13日は「正月の事始め」で、煤払いなど年末の大掃除がここから始まるそうです。新しい年を迎える準備が、この節目から動き出す。年末進行に追われる会社の空気と、けっこう重なります。
夏の無茶をちょっと休んで、力をためて養生する。これ、体の話であると同時に、経営にもそのまま当てはまる理屈だと思うんです。フル稼働で走り続けた組織は、どこかで補給しないと、一番踏ん張りたいときに息切れします。夏場の勢いのまま年末年始まで走り切ろうとする会社ほど、実は春先に一番ガタが来る。冬に何もため込まなかったツケが、そこで回ってくるからです。
例えば、繁忙期をずっとフル稼働で乗り切った工場があるとします。点検も整備も後回しにしたまま年を越すと、一番忙しい正月明けに限って機械が止まる。よくある話です。人も会社も、たぶん同じ仕組みで動いています。

抜け毛と冷えは、経営者にも効く話
この時期の不調といえば、抜け毛と冷え。髪は命尽きるまで生え変わるものだけど、腎気が弱ると減っていくと言われています。薄毛の予防にはこの時期の養生が大事で、何より冷え対策が一番。腰を回して骨盤の歪みを整えると流れがよくなって、腎気が高まるそうです。ぬるま湯の入浴もいい。夜は早く寝て、朝はゆっくり起きる。陽気を養って、陰精を固める。これが基本らしいです。
正直、経営者ってこういうサインを一番後回しにしがちな人種だと思います。数字の異常には敏感なのに、自分の手足が冷たいとか、髪の分け目が広がってきたとか、そういうのは「まあいいか」で流してしまう。会社の資金繰りは毎月チェックするのに、自分の体の資金繰りは何年もノーチェック、みたいな人、結構いるんじゃないでしょうか。
最近、腰回したり、湯船にゆっくり浸かったり、そんな時間ありますか。年末に向けて予定を詰め込む前に、一度だけ聞いてみたいところです。
かき、ねぎ、寒ブリで立て直す
この時期の食べ物といえば、かき、ねぎ、寒ブリ。かきは精をつけて不眠を直すとされていて、ストレスによる亜鉛不足に悩む現代人には必須の食べ物だそうです。ねぎは体を温めて気管支にも効く。気分を発散させる効果があって、鬱やストレスの改善にもいい。気の流れだけでなく血の流れもよくすると言われています。
体を温める食べ物をきちんと摂るというのは、地味だけど効く投資だと思います。例えば、社員に休憩も栄養も取らせずに繁忙期を乗り切らせる会社と、ちゃんと食べさせて休ませる会社があるとします。年明けの立ち上がりで差が出るのは、たぶん後者です。無理を続けた分のツケは、必ずどこかで払わされます。
忘年会や取引先との会食が続くこの季節、自分の食事、ちゃんと体を温める方に寄せられているでしょうか。
自社に置き換えると
夏場の勢いをそのまま引きずって、年末まで無理を重ねていないか。一度、自分の会社を眺めてみるといいかもしれません。繁忙期のピークが年明けにあるなら、今のうちに休ませておくべき人はいないか。壊れかけている仕組みや、ずっと後回しにしてきた設備の点検を、大掃除のタイミングで一緒に片づけられないか。そして経営者自身の体について、最後に人間ドックを受けたのがいつだったか、ふと思い出してみてほしいんです。
大雪の養生には足の経筋を伸ばす専用のストレッチもあるそうですが、そこまで真似できなくてもいいと思います。腰を回す、湯船に浸かる、かきとねぎを食べる。それくらいで十分。虎を打つのは春でいい。今は、補う番です。
・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2023年12月「大雪 二十一 / 二十四節気」を再編集)