冬至は「底」じゃない。これから始まるという話

冬至は一年でいちばん昼が短い日ですが、昔の人はそこを「終わり」とは呼ばなかった。「これから日が伸びていく、一年の始まり」と捉えた。柚子湯に蕎麦に除夜の鐘、年末の行事の一つひとつに、その感覚が今も残っています。

続いてきたことには、理由がある

冬至の日、太陽は南回帰線に直射します。北半球では夜がいちばん長く、昼がいちばん短い。数字にすると地味ですが、それだけ太陽が貴重だった時代に生きた人たちの感覚は、ちょっと違ったと思います。

柚子湯には、ゆずの香りと薬効で体を清める禊の意味があります。大晦日の蕎麦は「細く長く暮らせるように」。除夜の鐘は「一年の汚れを落とすため」に鳴らす。こうして並べると、年末の行事がよく考えられた設計だと気づきます。

昔から続いていることには、ちゃんと理由があるんです。由来を知ると、意外と深い。

例えば、だとします。あなたの会社に「なぜやるのか誰も知らないけど、毎年続いている慣習」があるとしたら。やめる前に一度、始めた人に聞いてみる価値はあります。誰かがかつて、ちゃんとした理由でそれを始めたかもしれない。合理的に見えないことが、実はいちばん効いていることもある。

冬は「蓄える季節」だという発想

漢方医学の養生では、冬は栄養を補給するのにぴったりの時期とされています。冬至を境に陰気が後退し、陽気が発生し始める。その切り替わりのタイミングに、人の体は外からの栄養を最も吸収しやすい状態になるとされているからです。

経営で言えば「仕込みの季節」です。売上が落ちやすい閑散期に人を育てる。余裕があるときに、大事な関係性を作っておく。忙しくなってからでは遅いことを、今のうちに手を打っておく。冬の養生には、そういう発想と重なるものがあります。

「命門」というツボがあります。へその真後ろにあるツボで、使い捨てカイロを貼るだけでいい。風邪、鼻水、冷えによる頭痛や肩こりに効くと言われています。経営者はデスクワークや緊張が続いて、腰や肩にこたえることが多い。覚えておいて損はないツボです。

冬至を境にした陰陽の転換 陰気 夜が長い 体は内へ向かう 蓄える季節 冬至 転換点 仕込みの好機 陽気 日が伸び始める 体は外へ向かう 発散の季節 転換点に栄養を補うことで、陽の力を最大限に引き出す

かぼちゃ、わかめ、黒豆の話

冬至にかぼちゃを食べる習慣があります。気を補い、消化機能を助ける効果があるとされています。わかめは精力や成長を促しますが、体を冷やす性質があるので温かいスープで食べるのがいい。

「なんといっても、ぼくの大好きな黒豆ですね。とにかく元気印で正月料理にも欠かせません」と原文にあります。「おせちってそういうものを集めたんですかね」という問いかけが残ります。

言われてみると、おせちは体によいとされるものの集まりです。効率ではなく、長い経験の積み重ねで「これが効く」と選ばれてきた知恵。そういうものを、現代はすぐ捨てたがる。もったいないと思います。

体を動かす、冬の型

冬至の時期に向いている体の動かし方があります。足の内側を通る経筋を伸ばすもので、両手を側面から上げながら息を吸い、吐くときに腰をかがめて両拳を膝の外に下ろします。息を吸うときに尻に力を込め、吐くときに力を抜いて戻す。自分の体の状態に合わせて、数回繰り返すだけでいい。

体が資本という言葉は、聞き飽きているかもしれません。でも自分の体調が判断の精度に直結しているのは、現場にいると実感します。機嫌が悪い日の打ち合わせは空気が悪くなる。疲れているときの意思決定は、あとで後悔しやすい。

それが分かっていても、後回しにしてしまうんです。年末のこのタイミングで、少しだけ体を整えてみる。難しいことじゃなくていい。カイロを一枚貼るだけでも、温かい食事を一杯食べるだけでも、何かが変わります。

自社に置き換えると

理由の分からないまま続いている慣習が、あなたの会社にいくつありますか。やめる前に、始めた人に聞いてみたことはあるでしょうか。そして今この時期、来年に向けて「仕込んでおくべきこと」として考えたとき、何が思い浮かびますか。

冬至が「始まりの日」だとしたら、立ち止まることは次への準備です。年の瀬に少しだけ立ち止まって、来年の自分と会社の姿を想像してみてください。

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

RYDEENについて

・文 杉岡 茂(初出:逍雲夜話 2023年12月「冬至 二十二 / 二十四節気」を再編集)

\ 最新情報をチェック /