動き出せる社長と、動き出せない社長の違い

「エンタープライズ」なんて言葉、今はもう聞きません。でも中身はそのまま、今の経営者に突きつけられていると思う。動き出せるか、動き出せないか。結局そこで会社の明暗が分かれる。ぼくはそう見ています。

「さあ、やろう」が全部の始まり

RYDEENでは社長さんに必要な「社長力」の筆頭に、「機動力」を挙げています。動き出す力のことです。

人間も機械も、止まっている状態から動き出す瞬間が一番エネルギーを食う。自動車が発進する一瞬が一番ガソリンを使うのと同じ理屈だと思っています。

「さあ、やろう」と思わない限り、身体は動きません。設備投資も、新規事業も、人の採用も、頭の中で「よし」と決まるまでは一歩も進まない。先に動くのは身体ではなく、精神の方です。

この精神の動きを、覚悟とか勇気とか呼んでいます。かっこいい言葉に聞こえますが、要は「決める」ということだけなんですよね。例えば、「来年こそ新しい設備を入れよう」と五年前から言い続けている会社があるとします。性能もコストもとっくに計算し終わっている。足りないのは情報ではなく、「さあ、やろう」の一言だけだったりする。御社にも、心当たりはありませんか。

正解がないなら、失敗もない

目標を立てて、設計図を作って、材料を集めて、あとは実行する。この実行の場面で決断がいります。決断には覚悟や勇気がいる。では、その覚悟はどこから出てくるのか。

ぼくは、「この世のことに正解なんてない」と腹の底から思えるかどうかだと思っています。正解がないなら、失敗もない。常に成功なんです。こう思えた瞬間、なんでも始められる。

目標を立てる 設計図を作る 材料を集める 実行する (覚悟・勇気) Never Give Up ここで止まる社長が、実は一番多い

開き直りに聞こえるかもしれませんが、経営判断の多くはやってみるまで正しいかどうか分からないものばかりです。例えば、新しい販路に挑戦するかどうか迷っているとします。市場調査をいくら重ねても、答え合わせは実際にやってみてからしか出来ない。だったら、迷っている時間そのものがコストになっているはずです。

正解を探す経営から、試して直す経営へ。腹の括り方ひとつで、動き出す速さが変わってくると思います。

Never Give Upは精神論じゃない

いったん始めたら、あとはNever Give Up。長年、中小企業の事業を見守る立場にいましたが、「もう少し続けていたら成功していたのに」と思う場面がしょっちゅうありました。

これを根性論で片付けたくないんです。先を見て自分を信じられないと、続けることはできない。続けるという行為は、未来の自分への信用そのものなんだと思います。

言うのは簡単です。でも実際にやるのはすごく難しい。資金繰りが苦しくなったり、周りから「もうやめたら」と言われたり、心が折れる理由はいくらでもある。

それでも、もう少しで芽が出るところでやめてしまった会社を何社も見てきました。悔しいです。本当に悔しい。あと半年、あと一年続けていたら、景色が違っていたかもしれないのに。

変化に強い生物、変化に弱い社長

今の時代の変化は、マイナーチェンジではありません。フルモデルチェンジです。世の中のルールが根本から変わろうとしている。

地球上で一番長く繁栄した生物は、一番能力が高い生物でも、一番体力がある生物でもない。一番、環境変化に適応できた生物だそうです。

成功体験のある人ほど、自分を変えるのが難しい。これは不思議でも何でもなくて、過去にうまくいったやり方を手放すのが単純に怖いからだと思う。今のこの国が苦しんでいるのも、たぶんこれが理由です。

例えば、ある業界で長年トップを走ってきた会社があるとします。やり方を変えなくても食えてきた。でも世の中のルールが変わった後も同じやり方にしがみつくと、気づいた時には後ろに何社も追い抜かれている、なんてことが起きる。過去の自分を、喜んで捨てられるかどうか。これがエンタープライズの正体なんだと、ぼくは思っています。

自社に置き換えると

御社では、「さあ、やろう」と決めたのに、実行に移せていないことがありませんか。もう少し続けていたら形になっていたかもしれない取り組みを、途中でやめてしまったことはないでしょうか。成功体験があるからこそ、変えられずにいるやり方はないか。一度、紙に書き出してみると、今の自社の機動力がどのくらいか、見えてくると思います。

正解を探すより、動き出す。やめたくなった時こそ、あと少し。偉そうなことを書いていますが、書きながら自分の胸にも刺さっています。機動力って、結局のところ、覚悟を決める回数の問題なんだと思います。

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

RYDEENについて

・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2022年2月「エンタープライズ」を再編集)


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