ツールより先に、ルールを変える話
中小企業のDXって、ここ最近すっかり静かになった気がします。コロナで世の中がバタバタしてた頃はあちこちで聞いた言葉なのに、今はもうみんな黙ってる。なのに東京だけは、またぞろ動き出した空気がある。地方に住んでいると、この差が正直ちょっと怖いです。
止まった地方、動き出した東京
DXが一瞬だけ話題になって、そのあとぱたっと止まる。コロナのせいもあって日本全体が思考停止してしまったけれど、東京だけは先に動き出している感じがある。これはそんなに不思議な話じゃないと思うんです。
情報も人も金も東京に集まってるから、変化の種が最初に落ちる場所も東京になる。地方の経営者がのんびりしてるわけじゃなくて、変化の芽に触れる機会そのものが少ないんです。
例えば、同じ業種の会社が東京と地方にそれぞれあるとします。東京の会社は取引先や同業の集まりで新しいやり方の話が自然と耳に入ってくる。地方の会社は自分で探しに行かないと、その話に出会うことすらない。降ってくる情報の量が違います。
だから地方の経営者ほど、自分から情報を取りに行く動きが必要になる。黙って待ってたら、差は開く一方です。

補助金を使わない会社は置いていかれる
事業再構築補助金については、かなり強めに言いたくなります。これを使うことを考えない企業は、この先大きく後退すると思います。
補助金というのは、国が「この方向に変わってほしい」と思っている方向を映す鏡みたいなものです。使うかどうかより先に、その方向性を読むことに意味がある。
例えば、売上の九割を一つの取引先に頼っている会社があるとします。この構造のままだと、再構築補助金の対象にすらなりにくい。申請条件を読み込む作業は、裏を返せば自社のどこが弱いかを教えてもらう作業でもあります。
補助金そのものが目的になってしまうと本末転倒です。申請書を書く過程で自社を見直すきっかけにする、くらいの距離感がちょうどいいんだと思います。
ツールより先にルールを変える
DXというのは、ルールとツールを変えることで儲けを大きくしようとすることです。このルールの変革こそが、事業の再構築そのものだと思っています。
ところが現場で起きているのはだいたい逆です。デジタルツールを入れることばかりに夢中になって、事業の仕組みそのものを変える頭が働かない。これで失敗する例をたくさん見てきました。
例えば、紙の受発注をタブレットに置き換えただけの会社があるとします。入力は速くなったけど、仕入れ方も売り方も昔のままです。これは道具の入れ替えで終わっていて、儲けの構造は何も変わっていません。
事業のコアを見つめ直して、どこへ行きたいかを先に決める。ツールはそのための手段でしかない。順番を間違えると、お金をかけて何も変わらないという一番悔しい結果になります。
成功者ほど危ない、サクセストラップ
過去の成功体験に拘らないこと。サクセストラップの罠にかからないこと。ここでわざわざ名前を出して警告したくなるのは、現場でそういう会社を何度も見てきたからです。
成功した経験があるほど、その経験を守る理由も増えます。今のやり方で売上を立ててきた実績があるから、変える理由を探すより守る理由を探す方が楽になってしまう。
例えば、ある商品がヒットして会社の看板になったとします。市場が縮んできても、その看板を外す決断はなかなかできません。看板を守ってきた人ほど、外す提案に抵抗する側に回ります。
大企業の失敗の多くはこれが原因だと思いますが、中小企業でも同じことが起きます。規模は違っても、過去の成功にしがみつく心理は同じです。
自社に置き換えると
人口が減って日本の市場の魅力が落ちていること自体は、どの会社にも変えられません。変えられるのは、自分たちのやり方だけです。
自社の売上の何割が、何年も同じ商品、同じ顧客からきているか、一度数えてみると案外怖い数字が出てくるかもしれません。今の事業のルールは、いつ誰が決めたものか覚えていますか。守りたいのは事業そのものか、それとも過去の成功の思い出か。
事業再構築補助金の申請条件を読んでみて、自社がどこで引っかかるか、試しに当ててみるのもいいかもしれません。引っかかった場所こそ、見直すべきルールかもしれないからです。
現実は誰にも動かせません。少子高齢化も、日本のマーケットの魅力が落ちていることも、自分の力では変えられない。変えられるのは自分の会社のルールだけです。今日からでも、そこに手をつけてみませんか。
・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2022年3月「DXの行方」を再編集)
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