経費のどこを見れば、会社が締まっているか分かるか
数字そのものより、5年分並べて動きを見る
利益は出ているのに、なぜか手元にお金が残らない。そんな相談を受けたとき、まず経費の一覧を出してもらいます。ただし単年ではなく、5年分を並べてもらうところから始めます。
一つの勘定科目を、今期の金額だけで見ても分かることは少ないです。人件費が1000万円だったとして、それが高いのか低いのか、単体では判断できません。5年分を並べて、前年比でどれだけ動いたかを見ると、会社の中で何が起きているかが見えてきます。
増減率で見る理由は単純です。売上規模が変わっていく会社では、絶対額の比較はあまり意味を持ちません。売上が2倍になった年に人件費も増えるのは自然なことです。むしろ、売上に対してどう動いたかの方が、経営の実態を映します。

人件費・支払報酬・旅費交通費に、業態の変化が出る
経費の中でも、この3つはとくに会社の姿を映します。ある建設会社の相談では、数年前に外部の協力者に頼る比率がかなり高かった時期がありました。景気が厳しい局面で、社内の人手だけでは仕事を回せず、外注や業務委託に頼らざるを得なかったそうです。
その後、代表が交代したタイミングで数字を洗い直したところ、人件費まわりの費目が大きく減っていました。外部への支払報酬も同じように減っています。これは悪いことではなく、体制がスリムになった結果です。ただ、その分だけ社内の人がカバーする範囲は広がっているはずなので、無理が出ていないかは別に確認が必要です。
旅費交通費の動きも見逃せません。全国を飛び回る営業スタイルから、拠点を構えて地元で仕事を取るスタイルに変わると、この科目は大きく減ります。逆に増えているなら、商圏が広がっているのか、非効率な動き方をしているのか、どちらの理由かを確認した方がいいです。
目安としてよく使うのが、人件費が売上に対してどれくらいの比率かという指標です。この比率がかなり高い水準まで上がっている状態は、危ないサインだと考えた方がいいです。健全な会社は、業種にもよりますが、もっと低い水準に収まっていることが多い印象です。適正な水準は業種や規模で変わるので、税理士や会計の専門家に相談しながら決めるのがいいと思います。
消耗品費と雑費、跳ねている年は中身を割る
消耗品費や雑費は、性質上どうしても「その他」の受け皿になりやすい科目です。ふだんは大きな金額にならないので放置されがちですが、ある年だけ急に増えていることがあります。前年比で数倍になっているようなら、そのまま流さずに中身を確認した方がいいです。
月ごとの内訳を見ると、特定の月に集中していることがよくあります。オフィスの移転や什器の入れ替えのような一時的な出費が、たまたまその科目に計上されているケースもあれば、本来は資産として計上すべきものが、費用として処理されているだけのケースもあります。
なかには、取引先の記載がなく、内容がよく分からない計上が見つかることもあります。悪意があるとは限りませんが、確認しないまま決算をまたぐと、あとで説明に困ります。金額の大きさに関わらず、雑費に計上する基準をあらかじめ決めておくと、こうした確認の手間はかなり減ります。たとえば一定額を超えたら別の科目に振り替える、取引先名を必ず書く、といったルールです。
外部に払っているお金、内製に戻せないかを毎年問う
費用の中身を見ていくと、外部業者への支払いが目立つ会社が多いです。これ自体は悪いことではありません。専門性が必要な業務や、繁忙期だけ発生する業務を外に出すのは、合理的な判断です。
ただ、その支払いが何年も同じ金額・同じ内容で続いているなら、一度立ち止まって考えてみる価値があります。社内で対応できる体制が整ってきているなら、内製に切り替えることで、支払いを社内の人件費に振り替えられる場合があります。逆に、社内の人手が足りないまま無理に内製化すると、別のところで負担が増えてしまいます。
この判断は、経費を減らすためにするものではありません。どこにお金を寄せるかを決めるための問いです。外に出している部分と、社内で持つべき部分の線引きを、毎年少しずつ見直していく。その積み重ねが、数年後の費用構造を大きく変えます。
自社に置き換えると
この記事を読んで、自社の経費を思い浮かべた方もいると思います。自社の人件費と支払報酬料は、この5年でどちらの方向に動いているでしょうか。増えているなら、その理由を人に説明できるでしょうか。消耗品費や雑費が特定の年、特定の月に膨らんでいないかも、一度確認してみる価値があります。外部に払い続けているお金の中に、実は社内でできる仕事が混ざっていないかも、考えてみてほしいところです。
経費の一覧は、ただの記録ではありません。会社がどこにお金を使い、どこを削り、どこに人を割いてきたかの記録です。数字を並べて動きを追うだけで、思っていた以上に多くのことが見えてきます。判断に迷う部分は、必ず税理士や専門家に確認しながら進めてください。