都市の地価が上がるワケ、本当は社長の頭の中にある
世界中で都市の地価が上がっています。東京も例外じゃありません。地方の地価はこれからも下がり続けるでしょう。でも、本当に差がついているのは土地の値段じゃなくて、社長の頭の中かもしれません。
地価は分かれても、環境は近づいた
コロナでリモートワークが一気に広がりました。これはすごい変化だったと思います。おかげで、都市と地方の「経営環境」の差はかなり縮まりました。ネットがあれば、どこにいても会議ができる。採用もできる。仕事を回せる。地方にいるからという理由で不利になる場面は、確実に減りました。

ただ、環境が近づいたのに、経営者の「意識」には逆に大きな距離ができてしまったように見えます。都市の経営者は「今がチャンスだ」と前のめりになっている。一方で地方では「コロナだから仕方ないね」という空気がどこか漂っている。この差は、売上やコストの差よりもずっと怖いものだと思います。
「今がチャンス」と「仕方ないね」の分かれ道
なぜ同じコロナという出来事から、正反対の受け取り方が生まれるのか。たぶん、都市に人が集まるとき、そこに集まっているのは人そのものじゃなくて、人がもっている「熱い想い」なんだと思います。やってやろうという気持ち、冒険心、試行錯誤を厭わない姿勢。そういうものが密度高く集まっている場所は、ちょっとした変化もチャンスに変換してしまう。
例えば、同じ業界で同じ規模の会社が、東京と地方にそれぞれあるとします。東京の社長は「今までのやり方が崩れたなら、新しいやり方を自分たちで作ってしまえばいい」と考える。地方の社長は「元に戻るまで我慢しよう」と考える。半年後、この二社の差はもう、気持ちの差では済まないはずです。地方の中小企業の社長さんは、この分かれ道の怖さを本気で考えたほうがいいと思います。
勝ち負けを決めているのは、資本力でも立地でもなく、経営者が変化をどっちに解釈するかです。読んでいるあなたの会社は、今年の変化を「仕方ない」で片付けていないでしょうか。それとも、だったら自分たちで動いてしまおうと思えているでしょうか。
大事な情報は、やっぱり人からしか来ない
リモートが広がって、人とつながること自体はすごく簡単になりました。でも、本当に重要な情報は、どうもデジタルを通しては伝わらないようです。結局は人から人へ、しかもリアルな接点を通じて伝わっている。地方で有益な情報を持っている人ほど、都市との生の付き合いを欠かさない人だったりします。
経済的な価値は、モノからジョウホウへ、はっきり移ってきています。無形資産とかオープンイノベーションとか、呼び方はいろいろありますが、早く言えば、情報に乗ったチャンスが都市に集まっているということです。これが世界中で都市の地価を押し上げている大きな理由なんだと思います。地価というのは、「ここに集まると得な情報が手に入る」という期待値の表れなのかもしれません。
福岡という近道、あるいは心の距離
リモートに頼りきるのも違う気がします。移動を自由にして経済を回していこうという空気も出てきましたから、思い切って都市に出かけるのもいいと思います。広島や山口の社長さんなら、東京じゃなくても福岡という選択肢があります。福岡は地方都市にしては珍しく、人口も経済も伸びているまちです。空港がまちに近くて、東京やアジアの各都市への距離がぐっと短くなる。
地方の会社が自主独立の気概を持ちながら、リモートで都市のチャンスにも参入していく。そのやり方の価値はすごく大きいと思います。物理的な距離はどうしようもなくても、心の中の距離は自分で縮められます。これって地方の経営者にとって、けっこう大事な話だと思うんです。
自社に置き換えると
ここまで読んで、自分の会社はどっちの空気に近いか、考えてみてほしいです。この一年の変化を「チャンスだ」と受け取れているか、それとも「仕方ない」で済ませていないか。重要な情報を取りに、わざわざ人に会いに行く機会を自分からつくっているか。リモートが便利になった分、逆に都市との生の接点が減っていないか。地価のグラフを見て他人事だと思うなら、それこそが一番危ない兆候かもしれません。
地価が上がる場所は、たぶんこれからも上がり続けます。その理由は土地が特別だからじゃなくて、そこに集まる人の気持ちが特別だからです。地方の経営者に必要なのは、環境を嘆くことじゃなくて、気持ちのほうを都市の経営者と同じ温度まで上げることなんだと思います。
・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2021年11月「都市の地価」を再編集)
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