知財とDX、結局は同じ話だったという話

最近「知財」とか「DX」って言葉、あちこちで見かけませんか。ぼくも最初はこの二つ、バラバラの流行り言葉だと思っていました。でも並べて考えてみたら、根っこは同じところにあるんです。今日はその整理を、ちょっとお付き合いください。

知財って、結局「金になる情報」のこと

知財、正式には知的財産。「知的」は情報くらいに考えればいい。「財産」は金になるもの、という意味です。だから知的財産とは「金になる情報」。最近よく聞く「無形資産」という言葉もほぼ同じ意味で、知財よりちょっと範囲が広いくらいです。

なぜ急に情報が金になる時代になったのか。昔は工場や機械、土地といった「モノ」が会社の価値のほとんどを占めていました。今は違います。モノを持たなくても、アイデアや顧客データや仕組みそのものが金を生む。形のないものにお金を払う人が増えたから、形のないものの値段が上がった。単純な話です。

例えば、同じようなラーメン屋が二軒あるとします。片方は美味しいけど普通の店。もう片方は味は同じでも、SNSで話題になる仕組みと、レシピや仕入れを管理するやり方を持っている。後者は店そのものより、その「仕組み」の方を高く買われることがある。これが無形資産の正体です。

DXはITの中の話、目的と手段がある

DXはDigital Transformationの略。ビジネスの世界では「デジタル技術でビジネスを根本から変える」ことを指すようです。ITはInformation Technology、情報技術そのもの。DXはITのうちデジタルな部分を使うことなので、DXはITという大きな箱の中に入っている話になります。

ITは手段、DXは目的。この関係で考えるとわかりやすい。ITを使ってビジネスを変えることがDXなので、ITを導入しただけで満足しているなら、それはまだDXとは呼べません。

御社はどうでしょう。パソコンを新しくした、クラウドに移行した、それで「DX進めてます」と言っていないでしょうか。それ、ただのIT化かもしれません。

知財とDXがくっつく理由

知財もDXも、深いところで「情報」に繋がっています。DXは情報技術を使って情報を金にする動き。知財はまさに金になる情報そのもの。並べてみると、DXとは知財などの情報をデジタル技術でお金に換えることだと言えます。

なぜこの二つの言葉が同じ時期に一気に広がったのか。スマホの登場で人の生活がまるごと変わったからです。生活が変われば、ビジネスのやり方も変わらないといけない。知財という古い言葉が今になって激しく動き出したのも、この大きな流れの中にいるからでしょう。

産業革命からIT革命へ、経営資源の比重が変わった

経営資源は長らく「カネ・ヒト・モノ」と言われてきました。そこに「ジョウホウ」が割り込んできて、これからもっと場所を占めるようになる。会社の値打ちを測る物差しそのものが、ゆっくり書き換わっています。

産業革命(18世紀〜) 農業社会 工業社会 IT革命(現在) 工業社会 コミュニケーション 社会 「モノ」中心の社会から「情報」中心の社会へ

18世紀の産業革命で、農業社会から工業社会に変わりました。今起きているIT革命は、工業社会からコミュニケーション社会とでも呼ぶべき何かに変わる動きです。モノを作る産業から、商業やサービスの世の中へ。「モノからコトへ」「所有から利用へ」なんて言葉もその表れです。

日本はいろんな分野で世界の先頭を走ってきました。でもその成功体験に乗っかって、安心してしまった。まわりの国がさっと追い越していくのを、指をくわえて見ていたようなところがある。元の成功体験があるだけに、変えるのが難しい。変わるのを嫌がっているのが今の日本だと思います。悔しい話です。

自社に置き換えると

自社の経営資源の中で、情報や無形資産がどれくらいの比重を占めているか、数えてみたことはあるでしょうか。カネ・ヒト・モノだけで会社の価値を測っていないか、一度振り返ってみてもいい。ITを入れただけで「うちはDX済み」と思い込んでいないか。仕組みやデータそのものを「金になる情報」として扱えているか、そのあたりも一度考えてみたいところです。

世の中の流れに乗ることが経営の極意だと思っています。流れが変わったのに会社のデザインを変えないままだと、時代とともに消えていく。動くこと、変わること。機動力と進取の精神、これが結局いちばん大事なんだと思います。

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・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2021年8月「知財・DXの時代」を再編集)


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