科学が、ちょっと怖い

昔から西洋の考え方が、どうもしっくりこなかった。科学というものが、正直ちょっと怖いんです。何か大事なものを、大胆に置き忘れている気がしてならない。一方で、東洋の考え方には妙に腑に落ちるところがある。何が違うのか、今もずっと探っています。

科学は「分けて数字にする」仕事

「科学」という字を分解すると、「科」は分けること、つまり分析することを意味します。分析した結果を数字に落とし込む。これが科学という仕事の正体です。分けて、数字にする。それだけと言えばそれだけです。

経営の現場でも、この「分けて数字にする」考え方はありがたく使われています。売上、原価、残業時間、離職率。数字にしてしまえば、比べられるし、管理もできる。だからみんな数字が好きです。ぼくも数字を見ます。

なぜ中小企業ほど数字に頼りたくなるのか、ちょっと考えてみました。会社が大きくなると、社長一人では全員の顔を見て回れません。だから数字という共通言語に頼る。これは悪いことではないんです。ただ、数字だけを追いかけていると、数字に出ない変化に気づくのが遅れる。遅れて気づいた頃には、もう手遅れということもある。

数字にした瞬間に、こぼれ落ちるものがある。例えば、ある社員が残業時間はそこそこなのに、妙に疲れた顔をしているとします。数字の上では問題なしです。でも、その人の「気」みたいなものを感じ取れるかどうかは、数字には出てこない。西洋の考え方は、ここが苦手なんだと思います。分けて数字にすることに徹するほど、分けられないもの、数字にならないものが見えなくなる。

東洋は「全体を陰で包む」仕事

東洋の考え方は、「天」を頂上に置いて、陰陽と五行で世の中を全体としてとらえようとします。天は人の手の届かない存在で、憧れの対象。地は足元にあるけれど、それでも人の思い通りには動かせない。その天と地の間に、人がいる。

陰陽でいうと、陽は分化を表し、陰は統合を象徴します。西洋が陽の役割を担い、東洋が陰の役割を担ってきた、というのがぼくの理解です。分けるのが陽、まとめるのが陰。会社という組織も、本当は同じ構造を持っている気がします。部門ごとの数字に分けて管理するのは陽の仕事。会社全体の「調子」をまとめて感じ取るのは陰の仕事です。どちらかだけでは立ち行かない。

例えば、ある会社の総務部が「残業時間を減らす」という数字だけを追いかけたとします。残業は減ります。でも、同じ仕事を家に持ち帰る社員が増えたら、会社全体としては何も良くなっていない。数字という陽だけを見て、陰にあたる会社全体の空気を見落とした例です。

五行は、地球の成り立ちの比喩

五行は木火土金水の五つの要素が基礎になります。地球はマグマの塊から始まり、温度が下がって水が生まれ一白水星。水によってさらに冷えて土が生まれ二黒土星。土の上に緑が生じて三碧木星、植物が繁茂して四緑木星。植物が枯れて土に戻り五黄土星。その土の中に金属が生まれて六白金星。九星気学は、地球の成り立ちそのものを五行で説明しているわけです。

地球の成り立ちを五行でたどると 水 一白水星 土 二黒土星 木 三碧・四緑木星 土 五黄土星 金 六白金星 冷えて固まり、育ち、枯れて、また新しいものが生まれる順番

九星気学と聞くと、占いでしょと思う方もいると思います。ぼくも最初はそう思っていました。ただ、ここで言いたいのは当たるかどうかではなくて、物事には順番があるという考え方そのものです。水のままでは形にならない。土ができて、そこに木が育って、やがて枯れて、また新しいものが生まれる。この順番を飛ばそうとすると、たいてい無理がくる。

これ、会社の成り立ちに重ねても面白いなと思っています。例えば、創業したばかりの会社は、水のようにまだ形が定まっていないとします。そこに少しずつ土台ができて土、土台の上に事業という緑が育ち木、茂って木、やがて古い事業が枯れて土に還り土、その中から新しい強み、金属のような核になるものが生まれる金。会社も、こうやって順番に姿を変えていくものなんじゃないか。そう考えると、五行は占いの道具というより、変化の順番を教えてくれる地図に見えてきます。

何と大いなる考え方なんでしょうね。ぼくはそう思ってしまうんです。

自社に置き換えると

自分の会社の数字を、分けて数字にすることにばかり頼っていないか。売上や残業時間はきれいに管理できているのに、社員や取引先の「気」みたいなものを見落としていないか。今、自社はこの五行のどの段階にいるのか。水のように柔らかくまだ形が定まっていないのか、土ができて事業が茂っている最中なのか、それとも古いものが枯れて次の核が生まれかけているところなのか。考えてみると、案外はっきり見えてくるかもしれません。

西洋の科学も、東洋の陰陽五行も、どちらが正しいという話ではないんだと思います。ぼくはただ、数字だけでは測れないものを、置き忘れたくないだけなんです。

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

RYDEENについて

・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2022年3月「東洋思想」を再編集)


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