秋分の日は、休むことも仕事のうちだと思う

9月23日ころ、秋分です。昼と夜がほぼ同じ長さになる、一年に二度しかない日のひとつ。ここから自然は「陽」から「陰」へと舵を切っていきます。季節の話ですが、経営者の毎日にも、実は結構効く話だとぼくは思っています。

昼と夜が同じになる日、何が変わるか

秋分は、太陽が真東からのぼって真西に沈む日です。昼も夜も、ほぼ同じ長さ。暑さと寒さが行ったり来たりしながら、少しずつ寒いほうへ傾いていきます。中国医学ではこの時期、養生のやり方を陰陽のバランスに合わせて調整するのだと言います。攻めっぱなしでは体がもたない、そういう考え方です。

ちょうど稲刈りの時期でもあって、あちこちで豊作を祝う行事があります。静かな季節なのに、どこか活気がある。収穫という「結果を刈り取る作業」と、来年に向けた「土を休ませる準備」が同時に進んでいるからだと思います。経営でいえば、決算期の後の一息みたいなものでしょうか。

会社を経営していると、ずっとアクセル踏みっぱなしになりがちです。売上を伸ばす、採用する、新しいことを始める。それ自体は悪くありません。でも一年中それだけをやっていると、どこかで無理が出ます。秋分は、そろそろペースを落としていいタイミングだよ、と自然が教えてくれている日なんじゃないかと、勝手に思っています。

早く寝ることを、経営判断だと思ってみる

このころから「陰」を養う時期に入ります。早寝によって陰を養い、早起きによって陽を追いかける。眠る時間を早めて、朝はきちんと起きる。単純ですが、これがなかなかできません。

経営者は判断の仕事です。数字を見て、人を見て、決める。判断力は体調と直結します。寝不足のまま下した決断が、翌朝見返すとずいぶん違って見える。そんな経験、心当たりがある方も多いんじゃないでしょうか。

例えば、資金繰りの相談を夜遅くに受けて、その場で結論を急いでしまう場面を想像してみてください。翌朝もう一度数字を見たら、実は選択肢がもう一つあった。そういうことは、意外と起きます。急いでいるときほど、一晩寝かせたほうがいい判断になる。秋分の養生が言っているのは、たぶんそういうことです。

自分の会社の意思決定、疲れた頭でしていないか。一度振り返ってみる価値はあると思います。

旬のものを、旬のうちに

秋分といえば、さんまと松茸です。さんまは心臓を丈夫にして、夏の疲れをいやしてくれる。「香り松茸味しめじ」と言うくらいで、店頭で香りを楽しむだけでも効果があるそうです。陰の時期に入るので、しょうがで体の芯を温めて代謝を上げる。ごぼうは高血圧や便秘にいいとも言われます。

旬のものには、旬のうちにしか出せない力があります。さんまも松茸も、時期を外すと値段は上がるのに味は落ちる。これは商売そのものだなと、いつも思います。

例えば、ある地域でしか採れない食材を扱う会社があったとします。その会社が一番強いのは、収穫の時期に一番いい状態のものを、一番いいタイミングで市場に出せたときです。旬を逃してから慌てて動いても、もう鮮度で勝てません。自社の「旬」がいつなのか、案外きちんと言葉にできていない会社は多いんじゃないでしょうか。

体を伸ばす、わがままになる

秋分の導引式(体を動かして気の流れを整える型)では、足の陽明経筋を伸ばします。息を吸いながら両腕を上げて耳を覆い、体を左にひねって天を仰ぐ。吐きながら正面に戻す。左右数回。難しい話ではなく、要するに固まった体をほどく動きです。

秋晴れの空を見上げると、上海蟹の季節だなと思います(もちろんそれだけじゃありませんが)。気分がいいと、自分の思いも前に出しやすくなる。センチメンタルに流されず、もう少しわがままになって、自分が本当にやりたいことをじっくり考えてみるのもいいですよ、と原文の筆者は書いています。ぼくもこの一節が好きです。

経営者は「会社のため」を優先しすぎて、自分が本当は何をやりたかったのか、後回しにしがちです。年に一度くらい、秋分みたいな区切りの日に、体を伸ばしながら考えてみる。悪くない習慣だと思います。

自社に置き換えると

自分の会社に、攻める時期と守る時期の区別はあるでしょうか。一年中同じペースで走り続けていないか、一度カレンダーを見返してみてください。

疲れた頭のまま決めている判断が、最近なかったでしょうか。急ぎの案件ほど、一晩置いて考え直す余地はないか。

自社の「旬」は、いつでしょうか。一番いい状態のものを、一番いいタイミングで出せているか。そのタイミングを逃していないか、確かめてみる価値はあると思います。

秋分は、昼と夜が同じ日。攻めと守りが同じ重さで並ぶ日、と言い換えてもいいかもしれません。ぼくは毎年この時期になると、少しペースを落として、しょうがの効いた汁物でも飲みながら、来年の準備を考えることにしています。忙しい経営者ほど、こういう区切りを意識的に作ったほうがいい。そう思っています。

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

RYDEENについて

・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2023年9月「秋分 十六 / 二十四節気」を再編集)


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