大寒に「ためる」。春が来る前に、今の使い方を問い直す
新暦で1月20日ごろ、大寒。二十四節気の最後であり、一年でいちばん寒い時期です。でも同時に、もうすぐ春が来る、という節気でもあります。
終わりではなく、仕込みの締め切り。この言葉が、毎年この時期に頭をよぎります。
二十四節気の「締め」とは何か

旧暦の区切りで言えば、大寒の次は立春です。暦の上での春の始まりに入ります。
この時期に節分があります。立春・立夏・立秋・立冬の前日のことを節分と呼ぶのですが、特に春の節分が有名です。豆まきの豆は「魔滅(まめつ)」に通じるから、という語呂合わせが由来とされています。恵方巻を丸かじりするのは、なぜなんでしょうね。毎年気になりつつ、調べたまま忘れているやつです。
春に備える節気、と言われても、今の時期は体も気持ちも重くなりがちです。行動力が衰えている感覚は、意外と体が正直に出しているサインかもしれません。それを無理に打ち消そうとしなくていい。むしろその感覚を活かして「春に向けて何をためるか」を考える時間にする。そういう使い方があると思っています。
「冬蔵」という考え方
東洋的な見方では、冬の三カ月は「生気が潜み、万物が蟄居する時期」とされます。「冬蔵(とうぞう)」という言葉があって、文字通り、冬は蓄えるものだという発想です。
これを経営に当てはめると、どうでしょうか。例えば、年明けから新規案件が動かず、「なぜ動かないんだ」と組織に発破をかけている状況があるとします。でもそれが冬蔵の時期なら、動かないのは当然かもしれない。静けさの中でじっくり戦略を固めていたかどうかが、春の動き出しを決める。
精神的な養生として、「落ち着いて気持ちを穏やかに新春を迎える」のがいいとされます。陽の当たる窓辺で午睡をするなんて、なんて贅沢なんでしょうね…と書いてあって、読むたびに、ああ、そういう時間を作れているかな、と思わされます。
この時期に食べるものの話
大根、ニラ、ショウガ、ニンニク。辛みと甘みを持つこれらの食材が、冬から春への陽気の変化に順応するのを助けるとされています。里芋や山芋もいいそうです。
里芋は気分を明るくして、うつを改善する効果があるとも言われます。山芋はアンチエイジングへの効果があり、他の薬の効き目を増幅させる作用もあることから、末期がんの患者さんに一定の効果があったともされます。半信半疑でもいいのですが、少なくとも「体を温めるものを、ちゃんと食べる」という習慣は、経営者にこそ必要だと思います。
経営者が体を壊すと、会社の速度が落ちます。当たり前のことでも、忙しい時期ほど後回しになる。寒さで体がエネルギーを消耗しやすいこの季節、食べることへの意識を少し上げるだけで、春の動き出しが変わってきます。
足の親指から始める朝の一手間
大寒の導引式(どういんしき)というものがあります。この時期に合わせて「足の太陰経筋」を伸ばす動きです。足の親指に始まり、くるぶし、大腿骨の前を通って、腹の中から肋骨、胸の中へとつながるラインです。
やり方はシンプルです。両手を前に上げながら息を吸う。吐くときに左足を一歩後退させ、両手を下ろす。息を吸うときに両手を握り、足の親指で地面をつかみ、頭を後ろにそらして筋をねじり引き上げる。吐くときに力を抜いて正面に戻す。左右を数回繰り返すだけです。
経絡の話は難しく聞こえますが、やってみると足の内側から体の中心に向かって何かが動いている感覚があります。朝、出かける前の数分。それだけで一日の始まりが少し変わる気がしています。
自社に置き換えると
この大寒の時期、自分の会社はどういう状態にあるか。少し立ち止まって見てみてください。
春に向けて「ためる」より「動かす」を優先し続けてきていないか。組織の中に、休む間もなく走り続けている人がいないか。そして、立春が来たときに動き出せる準備として、今月中に具体的に決めていることが一つでもあるか。
この三つを、少し静かな場所でゆっくり考えてみてください。
大寒は一年でいちばん寒い日ですが、春まであと一節気です。その事実だけで、少し背筋が伸びる気がします。
・文 杉岡 茂(初出:逍雲夜話 2024年1月「大寒 二十四 / 二十四節気」を再編集)