寒の入りを乗り越える。1月の「気」を立春まで持たせるために
二十四節気の「小寒」は、新暦で1月5日ごろに当たります。ここから立春までの約1ヶ月が「寒の内」。一年でもっとも寒い時期です。ただ、このどん底の寒さの中で、雁はすでに北へ帰り始め、鵲は巣を作り始めているという。動物たちは、人間より先に春の気配を感じとっている。そう思うと、この時期の見え方がちょっと変わります。
新年の気は、早めに薄れていく
新しい年を迎えるとき、身が引き締まる感覚があります。年頭の挨拶を交わし、今年こそと思う、あの感じ。「この時は気が充実している」。問題は、この気がどんどん日とともに薄れていくことです。
1月7日には春の七草を入れたおかゆをいただく習慣があります。せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ。お正月の食べすぎで疲れた胃を休める意味もある。と同時に、ここで一度立ち止まって体と気を整えなおす、という節目でもあるように思います。
あなたの会社では、年初の目標や計画が、今もチームの中で生きていますか。年明けに放った熱が、1月末にはもう冷めかけている、という経験はないでしょうか。

気の巡りを助けるものを手元に
みかんの皮、ゆずの香り、ネギやしそ。これらは気の巡りを促進するとされています。おとそには風邪の防止の意味があり、豚肉のビタミンB群が免疫力をサポートする。春菊もこの季節によいとされています。
例えば、毎朝ゆずを浮かべたお湯を一杯飲む習慣をつけているとします。味というより、香りで頭のスイッチが入る感覚がある。それだけのことでも、「今日も動く」という気持ちの立ち上がりが変わってくる。身体の巡りを整えることが、思考の巡りにもつながる。東洋の養生の知恵は、そういうところにあるような気がします。
経営者が体調管理を後回しにしがちなのは、どこの会社でも見かける光景です。でも考えてみると、舵を握る人間が倒れたとき、船はどうなるか。この季節だけでも、意識して温める。それだけでずいぶん変わります。
保温は「内側から」という発想
小寒の養生でもっとも大事とされるのが「保温」です。お腹をさすり、お湯で足を温める。血液循環を改善して代謝を促進し、寒さを内側から追い払う。外から厚着をして寒さをしのぐのではなく、内側の火を育てるイメージです。
適度に体を動かして肢体を伸ばすことで、陽気を奮起して寒さへの抵抗力を高める。例えば、寒いからといって縮こまって動かずにいると、かえって体が冷える。動くことで熱が生まれる。当たり前のことのようで、寒い朝に体を動かすのはなかなか意志がいります。
吐き切ってから、吸う
深呼吸の話が印象に残りました。「生まれた時の空気はずっと肺に残っていると言います。これを追い出すくらい吐いてみる」。横隔膜が動くことで内臓の働きがよくなり、気の生成に良いとされています。
思い切り吐き切ってから吸う。この順番が大事で、吸うことより吐くことを意識する。これは身体だけの話じゃないかもしれない。去年からの課題、変えた方がいいと思っているのに手をつけていない慣習、溜め込んだままの判断。新しい空気を入れたいなら、まず古い空気を吐き切ることが必要です。
小寒の導引式では、足の太陰経筋を伸ばす動きをします。息を吸うとき左足に重心を移し、左手を下に押し、右手を上へ押し上げる。吐くとき右に腰を回して経筋をねじり引き上げる。呼吸と体の動きをつなげることで、気を流していく。この「呼吸と動作を連動させる」感覚は、慌ただしい現代では失われやすいものです。
自社に置き換えると
年初に立てた目標と計画は、今も会社の中で動いていますか。「寒の内」の1ヶ月、どれだけ熱が保たれているか確かめてみてください。自分の体の管理を誰かが代われる仕組みは、今の会社にありますか。そして、去年から変えようと思いながら変えていない「古い空気」はないでしょうか。吐き出すタイミングとして、この寒の入りを使えないか、考えてみる価値があります。
動物たちはすでに春の準備を始めている。いちばん寒い時期に、次の季節の動きを先読みして動き出している。その気配を感じ取りながら、自分の体と気を整える。それがこの季節の過ごし方だと思います。
・文 杉岡 茂(初出:逍雲夜話 2024年1月「小寒 二十三 / 二十四節気」を再編集)