霜降 – 気分転換は、頭で考えるものじゃない

新暦で10月23日ごろ、霜降という節目がある。二十四節気でいうと秋の最後の節気で、そろそろ霜が降り始めるころ。健康法の話のようで、経営者にとっては仕事の話でもあるとぼくは思っている。

陽気が体に収まるころ、頭の中も同じ

霜降は秋が冬へ変わる節目で、外に出ていた陽気が体の内側に収まり、精気が留まる時期だと言われます。だから食事では陰を補って、胃と脾臓を整えて、冬に向けて力を蓄えろと。

これ、経営に置き換えるとわりと腑に落ちる話です。期の変わり目とか、決算をまたぐ時期って、外向きに使っていたエネルギーを一度中に戻す必要があるタイミングじゃないでしょうか。ずっと外に向けて営業して、投資して、拡張してを繰り返していると、どこかで息切れします。息切れした状態で次の季節に入ると、たいてい判断を誤ります。

例えば、ずっとアクセルを踏みっぱなしの車があるとします。たまにアイドリングさせてやらないと、エンジンはそのうち焼き付きます。会社も経営者本人も、同じ仕組みで壊れます。今の時期、自分の中に何かが「収まっていく」感覚、ありますか。

気分転換は「動く」ことでしかできない

この時期はくよくよ悩みやすい季節らしいです。原文にもそう書いてあって、その最大のテーマが「気分転換」だと。気分転換というと、頭を切り替えるとか、考え方を変えるとか、そういうイメージがある人が多いと思います。でも実際は体を動かすことだと書いてあります。軽い体操とか、歌うこととか。

これ、なるほどなと思うんです。悩みごとって、座って考え続けているうちにどんどん深くなります。経営者は特にそうで、会議室で一人で唸っていても、堂々巡りになるだけのことが多い。血の巡りが悪いところに、頭だけフル回転させているような状態です。

ポジティブに考える、とよく言いますが、これって結局、自然の流れに任せるってことじゃないですかね。無理に前向きな言葉を並べるんじゃなくて、体を動かして、勝手に気分が切り替わるのを待つ。順番が逆なんです。気分を変えてから動くんじゃなくて、動いてから気分が変わる。

今週、悩みごとを抱えたまま椅子に座り続けている時間、どれくらいありますか。散歩でも、社内を一周歩くだけでもいいので、体を動かしてから考え直してみると案外あっさり答えが出たりします。

手首と足首、小さい冷えが大きい風邪になる

この時期は風邪を引きやすくなります。原文では手首と足首の冷えに注意しろと書いてあって、それだけで相当の風邪対策になると。手首足首なんて、経営の話からいちばん遠そうな部位ですが、これがまた効くんです。

会社の不調も、だいたい似たところから始まります。売上が急に落ちるとか、大口の取引先が離れるとか、そういう派手な事件から崩れることは実は少ない。現場の小さい違和感、誰かのちょっとした不満、数字のわずかなズレ。そこを放っておくと、気づいたときには全身に熱が回っています。

例えば、社員が一人ぽつりと「最近ちょっと忙しすぎて」とこぼしたとします。それを聞き流すか、立ち止まって話を聞くか。この差が、半年後の離職率に出ます。手首足首を温めるくらいの手間で防げることを、放置して大ごとにしていないでしょうか。

自分の会社で、いま「手首足首」にあたる部分はどこでしょう。売上でも組織でもなく、いちばん目につきにくいところに、案外答えがある気がします。

黄色い野菜と鍋、よく噛むこと

食べるものは黄色がいいそうです。かぼちゃ、にんじん、じゃがいも、さつまいも、春菊。なんと言っても鍋。いろんな鍋を考えて食べるのも楽しいと原文にあります。それからこの時期はよく噛んで唾液を出すこと。脳を活性化して、体の浄化を促進するそうです。

経営者の体って、正直、後回しにされがちです。会社の資産管理はあれこれ言うのに、自分の体という一番の資産は雑に扱う人が多い。忙しいと昼飯を五分で流し込んで、また会議に戻る。それを何年も続けて、ある日ぱたっと倒れる人をぼくは何人も見てきました。

よく噛むというのは、要は急がないということです。急いで飲み込む食事と、急いで出す結論は、たぶん似ています。噛む回数を増やすだけで頭が整理される感覚、経営者ほど一度試してみてほしいです。

自社に置き換えると

この時期、自分は外に向けたエネルギーを内側に戻せているか。悩みごとを頭だけで解決しようとして、体を動かすのを忘れていないか。現場の小さい違和感を、忙しさを理由に聞き流していないか。この三つ、一度立ち止まって自分に聞いてみてほしいです。

季節は勝手に巡ります。経営者にできるのは、その流れに逆らわず、体を通して整えることくらいかもしれません。手首を温める、鍋を食べる、よく噛む。地味なことばかりですが、地味なことしか結局は効かないというのが、ぼくがこの時期になるたび思うことです。

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

RYDEENについて

・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2023年10月「霜降 十八 / 二十四節気」を再編集)


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