小満、まだ満ちていないのが一番いい
「小満(しょうまん)」って読めますか。二十四節気の八番目、新暦だと5月21日ころです。夏の作物がぐんぐん育って、でもまだ完熟には一歩足りない。そういう時期のことをこう呼ぶんだそうです。
小満というちょうどいい未熟
「小満」の名前の由来を知ったとき、ちょっと膝を打ちました。草木が天地に繁って、命が少しずつ満ちてくる。でも「満」じゃなくて「小満」。完成の一歩手前ってことです。
会社の成長にも、これに似た時期があります。売上は伸びてる、社員も増えてる、でもまだ仕組みはガタガタ。例えば、創業して5年か6年くらい経った会社だとします。社長が現場も経理も採用も全部見てる。でも社員の顔は元気だし、伸びしろしかない。そういう会社、見てて気持ちがいいものです。
完全に満ちきったあとって、案外そこから先は伸びにくい。天下を取ったあとの話です。小満のうちに、次の一手を仕込んでおく。皆さんの会社は今、六分目でしょうか、八分目でしょうか。

赤いものと、薄味の構え
原文の前回は赤い食べ物の話をしたそうです。今回はそこに、赤い服や赤い持ち物、赤い家具も効くと書いてあります。夏の気を、体のまわりから取り込むという発想なんでしょう。
食事はさっぱり薄味がいいらしいです。解熱して、湿気を取って、脾臓の働きを助けて、元気をつける。この時期はスイカ、玉ねぎ、苦瓜、スナップエンドウがいい。魚はキス、紫うに、まな鰹。まな鰹の幽庵焼きは最高だそうです。個人的には新玉ねぎの味噌汁が捨てがたい、とも書いてありました。新茶が出て、柏餅を食べて、花は芍薬とカーネーション。潮干狩りに行って、下駄箱を掃除して、母の日を迎える。そういう季節です。
会社にも、この「薄味」の感覚、あっていい気がします。景気がよくなって仕事がどんどん入ってくる。血管が広がる状態です。でも人手や仕組みが追いつかない。無理して受けすぎて、あとで息切れする会社を何社も見てきました。濃い味で無理に満たそうとしない。身の丈で、淡々と回す。それが夏を越えるコツなんだと思います。
息切れしたら深呼吸
暑くなると血管が広がって、肺の働きが追いつかなくなる。だから息切れしやすくなる、と原文にあります。対策は、気がついたら深呼吸すること。それだけです。でもこれがなかなかできません。
忙しいときほど、息を止めて仕事してる感じ、ありませんか。メールの返信、資金繰りの計算、採用面接。気づいたら肩に力が入って、呼吸が浅くなってる。
例えば、月末の資金繰りがぎりぎりだとします。頭の中が数字でいっぱいで、息をするのも忘れそうになる。そういうときこそ、いったん手を止めて深呼吸したほうがいい。判断がまともに戻ってきます。経営者の皆さんは、今日、深呼吸しましたか。
足るを知るという構え
小満の時期は、脾臓の働きを助けて湿気を取り除く養生がいいとされます。脾は暖かくて乾いた場所が好きで、湿気が苦手なんだそうです。導引式は立夏のときと同じ、手の厥陰心包経を伸ばす動きをする。そして心の平和と、「足るを知る」気持ちを保つことが大事だと書かれています。
これがなかなか難しい。もっと売上、もっと利益、もっと拡大。足りない、足りないと思いながら走り続けてる経営者、多いと思います。ぼくもそのひとりです。
でも小満は、満ちる手前で「これでも十分うれしい」と思える季節でもあります。例えば、去年より売上が少し落ちた年があったとします。それでも社員が辞めずに残ってくれた。お客さんが変わらず来てくれた。それは、もう十分満ちてる状態なんじゃないかと思うんです。
新玉ねぎの味噌汁とか、新茶とか、柏餅とか。小さい季節の楽しみを取りこぼさないでいる会社って、案外強い。足るを知る、はそういう小さいところから始まる気がします。
自社に置き換えると
自分の会社は今、六分目でしょうか、八分目でしょうか、それとも満ちすぎて息切れ気味でしょうか。仕事を受けすぎて、人や仕組みが追いついていない部分はありませんか。今期の目標、もっともっとで走り続けていませんか。それとも、いまの状態で十分ありがたいと思えているでしょうか。社員やお客さんとの関係で、去年と変わらず続いているものは何でしょうか。
小満は、まだ満ちていない自分を、そのまま肯定していい季節なんだと思います。会社も同じで、完成してなくていい。むしろ完成する手前のいまが、いちばん伸びしろがある。深呼吸して、薄味で、足るを知る。今年の初夏は、そんなふうに過ごしてみようと思います。
・文 杉岡茂
(初出:逍雲夜話 2023年5月「小満 八/二十四節気」を再編集)
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