白露、汗をかく季節から身をかがめる季節へ

新暦の9月8日ごろ、白露です。朝の空気がふっと変わって、庭の草に露が降りる。二十四節気でいうと、夏の「陽」が収まって「陰」が満ちはじめる境目の日です。会社をやっていると、こういう季節の変わり目ってつい見落としがちなんですけど、実は体にも会社にも、けっこう効いてくる時期だったりします。

陽が収まる、陰が満ちる。それは経営の中でも起きている

白露というのは、昼と夜の温度差が広がって、冷えが結露を呼び、朝露が白く固まることから来た名前だそうです。自然界の「陽」がだんだん収まって「陰」が上がってくる。だから発汗に気をつけて、肺をいたわって、脾臓を健やかにする。陽気を守る、という意識が大事な時期だと原文にはあります。

これ、経営の話に置き換えるとけっこう腑に落ちるんです。会社にも「陽」の時期と「陰」の時期があります。攻める、broadenする、勢いで押していく時期と、絞る、整える、体力を溜め直す時期。夏の勢いのまま秋も冬も全力で走り続けようとすると、汗をかきすぎて体力を消耗するのと同じことが会社にも起きます。人も資金も、出しっぱなしでは続かない。

例えば、繁忙期をノーブレーキで乗り切った会社が、閑散期に入った途端に社員がバタバタ体調を崩す、なんてことがあります。あれは陽気を使い切ったまま陰の季節に突入してしまった状態だと思うんです。切り替えのタイミングを自分たちで決められるかどうかは、けっこう大きい。

重陽の節句は、収穫を数える日

9月9日は重陽の節句。栗ごはんなどで祝う収穫祭の意味合いがあるそうです。冷気が強まるので体を衣服で覆って、冷たいものを控える。萩、すすき、葛、なでしこ、おみなえし、藤袴、桔梗と続く「しぶい花」を楽しめるのもこの時期の醍醐味だと原文は書いています。

収穫祭というのは、立ち止まって「今年はこれだけ採れた」と数える日なんですよね。会社の場合、この「数える」作業を意識的にやっているところは案外少ない気がします。売上や利益の数字は見ていても、今期何を積み上げたか、誰が何を頑張ったか、そこまで棚卸ししている経営者は多くないんじゃないでしょうか。

派手な祝賀会じゃなくていいんです。栗ごはん一杯分の、ささやかな区切り。それだけで、走り続けてきたチームの気持ちはだいぶ違うと思います。

辛いものでごまかす前に

原文には、ストレス社会には激辛がいいとあります。わさび、しょうが、ニンニク、ねぎ、大根。うつ改善やストレス改善にいいとされている、と。れんこんや山芋、里芋、梨、カンパチもいいけれど、なんといってもお米にはかなわない、とも書いてあります。

ここ、ちょっと立ち止まって考えたいところです。激辛は刺激でストレスを一瞬紛らわせてくれる。でも根っこのストレス原因が消えるわけじゃない。会社の中でも似たことが起きています。残業で誤魔化す、飲み会で発散する、忙しさで考えないようにする。どれも一時しのぎで、火種は残ったままです。

激辛が悪いわけじゃありません。ただ、それだけで済ませていないか。自分の会社のストレスの根っこは何なのか、たまには辛いもの抜きで考える時間があってもいい気がします。

深呼吸してから、自分を振り返る

白露の導引式では、足の陽明経筋を伸ばすそうです。息を吸いながら両手を握って骨盤を押し、背中を前に伸ばして頭を回して左上を見る。吐くときは正面に戻す。原文はそう説明した上で、秋は適度な運動で心の安定をはかること、感傷的になりすぎず秋の穏やかさに合わせることが大事だと続けます。胸を張ってしっかり呼吸をすること、そして自分の身をかえりみること。

「未来は過去の延長線上にしかない」という一文が、この原文の中でいちばん刺さります。木の年輪と同じで、今の会社の形は、これまでの判断の積み重ねでしかできていません。急に違う会社になったりはしないんです。

例えば、来期の計画を立てる前に、今期やってきたことを一つずつ振り返ってみる。うまくいったこと、やめたこと、逃げたこと。それを味わってから未来を描くのと、いきなり数字だけ積み上げるのとでは、出てくる計画の質がだいぶ変わる気がします。

自社に置き換えると

この時期、自分の会社に置き換えて考えてみると、いくつか気になることが出てきます。うちの会社は今、陽と陰、どちらに偏ったまま走っているだろうか。攻めっぱなしで、切り替えるタイミングを逃していないだろうか。今期積み上げてきたものを、栗ごはん一杯分でもいいから、社員と一緒に数えたことがあっただろうか。そして、忙しさや残業やちょっとした発散で誤魔化しているストレスの根っこに、実はまだ手をつけていない、なんてことはないだろうか。

白露は、暑さの名残と秋の気配が同居する、なんとも中途半端な時期です。でもその中途半端さの中に、立ち止まって数えたり、振り返ったりする余白があるんだと思います。優雅とまでは言えなくても、ちょっとだけ深呼吸する秋にしたいものです。

・文 杉岡茂

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

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(初出:逍雲夜話 2023年9月「白露 十五 / 二十四節気」を再編集)

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