桜満開の四月、経営者の胃がやられる理由
四月に入ると、道端の新芽がぐっと伸びて、なんだか気分が軽くなります。二十四節気でいう「清明」、一年でいちばん気持ちのいい季節です。でも経営者にとっては、実はいちばん体にこたえる季節でもあるんです。
清明という、心が浮き立つ季節
清明は二十四節気の五番目、暦でいうと4月5日ころにあたります。「清らかで明るい」という字のとおり、空気が澄んで、光がまぶしくなってくる時期です。桜が咲いて、新学期が始まって、入社式や入学式が重なる。気分が新しくなる季節です。
桜がこの時期の象徴になったのは偶然じゃない気がします。パッと咲いて、パッと散る。その儚さが日本人の心に合っているんだと思います。
昔から清明にはお墓参りの習わしがありました。先祖を偲びながら、春をめでる。忙しい経営者ほど、こういう節目で立ち止まる時間を持ってきたんだと思います。4月8日のお花まつりのころには、雨上がりの空に虹がかかることも増えてきます。

「晴れ」の日が続くと、経営者から先に潰れる
日本語には「晴れ」と「褻」という言葉があります。晴れ着、晴れの日、というときの「晴れ」は非日常のこと。褻は今はあまり使いませんが、日常のことを指します。4月は「晴れ」の予定がやたら多い月です。入社式、株主総会、取引先への新年度の挨拶回り。経営者は特にこの「晴れ」を一手に引き受ける立場にいます。
なぜこの時期に体調を崩す経営者が多いのか。理屈で考えると単純で、緊張とストレスが続くと胃腸に負担がかかるからです。非日常が続くというのは、体からすると「気を張っている状態」がずっと解除されないということです。本人は「充実してる」と思っていても、内臓は正直です。
例えば、四月に入社式をやって、そのまま取引先を挨拶回りして、決算の報告会もこなして…というふうに「晴れ」の予定が三つも四つも重なる社長がいるとします。本人はやる気に満ちているつもりでも、胃はもう悲鳴をあげ始めている。こういう時期こそ胃腸の養生が要ります。
動くことでしか、整わない
清明の養生は、とにかく「動く」ことだとされます。清明導引式という体操では、手の太陽小腸経という経絡を伸ばします。小指から腕の外側、肩甲骨を経て、首の横から目じりまで届くラインです。息を吸いながら肩甲骨を左右に開いて、弓を引くように両腕を広げる。弦を引く手を見ながら、息を吐いて腕をおろす。これを左右交代でやるだけです。
なぜ「動く」ことが養生になるのか。経営者の仕事は会議、決裁、面談と、椅子に座ったままの時間がずっと続きます。頭ばかり使って、体を動かさない日が続くと、判断力そのものが鈍ってくる。血の巡りが悪くなれば、頭の巡りも悪くなる。これは漢方だけの話じゃなくて、体を使う仕事をしている人なら経験的にわかることだと思います。
ここ最近、朝から晩まで座りっぱなしで一日が終わっていませんでしたか。忙しい社長ほど、体を動かす時間を真っ先に削ってしまいます。
季節に合わせて生きる、という古い知恵
漢方医学では、人は四季の変遷に体を合わせるべきだと言います。春は万物が伸びていく季節なので、ゆったりした服を着て、早寝早起きして、体をたくさん動かすのがいいとされる。食べ物でいうと、にんにく、レバー、鶏肉がいいそうです。
うっ…、と正直思います。にんにくとレバーを一緒に食べる朝は、あまり想像したくありません。
でもこの発想そのものは経営にも通じるところがあると思っています。会社にも繁忙期と閑散期があります。同じペースでずっと全力疾走しようとすると、どこかで壊れる。季節ごとにやり方を変えるのは、逃げでも怠けでもなくて、長く続けるための知恵なんだと思います。
自社に置き換えると
四月の「晴れ」の予定、今年はいくつ重なっていますか。入社式、決算、株主総会、取引先への年度挨拶。ぜんぶひとりで背負い込んでいないか、一度書き出してみるといいかもしれません。体を動かす時間は、今週のスケジュールのどこかに置けていますか。
社員の顔つきや口数にも、この季節らしい波は出ていませんか。忙しさで押し切るのは簡単ですが、それで壊れるのはたいてい一番踏ん張ってる人からです。
答えはすぐに出なくていいんです。四月のうちに一度、自分に聞いてみるだけで十分だと思います。
桜はもうすぐ散り始めます。清明が終わるころには、経営者の体も少し軽くなっていてほしいと思います。無理をして倒れたら、会社ごと止まってしまいますから。まずは深呼吸をひとつ、しませんか。
・文 杉岡茂(初出:逍雲夜話 2023年4月「清明 五/二十四節気」を再編集)
あわせて読みたい
- 徳と得、同じ読み方の二文字で考えたこと2026-09-14
- 特定技能で人を受け入れるとき、支援計画書に何を書くか2026-09-13
- 八十八夜が教えてくれる、忙しくなる前にやるべきこと2026-09-13