小雪、力を外に出さずにためておく季節
新暦でいうと11月22日ごろ。小雪という時期です。まだ雪は降らないけど、木枯らしが吹き始めて、かと思えば急に小春日和になって季節外れの花が咲いたりする。うちの会社もこのくらいの時期になると、社内の空気がふっと内向きになる気がします。今日はこの季節の養生の話を、経営の話に重ねて書いてみます。
木枯らしの中で、得した気分になる日
寒の戻りで小春日和になると、春の花がぽつっと咲くことがあります。これに出会うと、なんだかとっても得した気分になります。狙って作れるものじゃないから、余計にうれしい。

会社をやっていても、こういう思わぬ得はあります。例えば、閑散期に入ったつもりでいたら、ふらっといい話が舞い込んでくるとします。狙ってなかった分、うれしさが違います。ただ、これを当てにして動くと痛い目にあいます。あくまで、たまたま咲いた花です。
この時期は勉強するにもいい季節だと言われます。芽吹く季節にきれいな花を咲かせるには、寒い今のうちに自分を磨いておく必要がある。仕込みの時期です。この閑散期に何を仕込むか。ここで差がつく気がします。
陽気を鎮める、という発想
小雪というのは、陰気がたまって陽気がだんだん薄らいでいく時期なんだそうです。万物の生気が失われて、天地が閉じていって、そのまま真冬に向かっていく。この時期の養生は、心を落ち着けて体の中の陽気を鎮めることだと言われています。
外に向けて何かを表現するより、内側にエネルギーを貯める。これがこの時期の過ごし方だそうです。経営をやっていると、常にアクセルを踏み続けたくなります。でも一年中全開でいたら、どこかで息切れします。繁忙期に力を出し切ってしまった会社が、閑散期に何も残っていない、というのはよく聞く話です。
出す時期と貯める時期を分けて考える。これができている会社とできていない会社の差は、たぶん一年終わってみないとわからないものです。今は貯める時期だと割り切れているか、自分の会社に聞いてみたくなります。
日光浴は最高です、と原文にも書いてあります。日光を浴びて体の中の陽気を刺激して、経脈を温めて寒さを防ぐ。貯めるだけじゃなくて、外からの小さな刺激も取り入れる。閉じこもるのとは違うようです。
くるみ、りんご、白菜。体を整える食べ物
この時期の食べ物といえば、くるみ、りんご、白菜だそうです。あっさりしてるのに甘みのある白菜は、鍋には欠かせません。くるみは脳にいい、老化防止にいい、毎日食べるとボケ防止になるとも言われています。りんごは万人向きで、毎日食べるといいらしい。体に潤いを与えて、乾燥するこの季節の肌を守ってくれます。
特別な話じゃないんです。普段の食事に、ちょっと気をつかうだけです。会社も同じで、特別な施策より、日々の小さな手当ての積み重ねの方が効くことが多い気がします。例えば、社員の健康診断の結果をちゃんと見ている会社と、出しっぱなしの会社があるとします。何年か経ったときに、たぶん差が出ます。地味だけど、効くものは効くんだと思います。
足の経筋を伸ばす、小さな体のメンテナンス
小雪の導引式では、足の厥陰経筋という部分を伸ばすそうです。親指から始まって、足の内側を通って、体の奥まで連絡している経筋。重心を右にずらして息を吸いながら右手で左肘を引く。吐きながら左足を上げて、左手で左膝の内側を押す。これを自分のペースで何度か繰り返す、とあります。
正直、これだけ聞いてもピンとこないかもしれません。ぼくも最初はそうでした。でも、要するに体の奥の方を、日常のちょっとした動きで整えるということなんだと思います。派手じゃない。誰かに見せるためのものでもない。
会社の点検も、これに近いところがあります。決算書の数字を眺めるだけじゃなくて、現場の小さな違和感を拾いにいく。派手な施策より、地味な点検を続けている会社の方が、結局長持ちする。何度もそう思わされてきました。
自社に置き換えると
この季節の話を読みながら、自分の会社は今、出す時期にいるのか、貯める時期にいるのか、考えてみるのはどうでしょう。繁忙期に力を出し切って、閑散期に息切れしていないか。逆に、貯めるべき時期に無理に外へ出そうとして、空回りしていないか。
社員の体調や、現場の小さな違和感に、決算が締まってから気づく、みたいなことになっていないか。日々の点検を後回しにしていないか、一度振り返ってみてもいいかもしれません。そして、この閑散期に何を仕込んでいるか。芽吹く季節にきれいな花を咲かせる準備は、今のうちにしかできません。
木枯らしの中でふっと咲く花みたいに、狙ってなくても得することはあります。でも、それを待つだけじゃなくて、内側に力を貯めておく。今年の小雪は、そんなことを考えながら過ごしてみようと思います。
(初出:逍雲夜話 2023年11月「小雪 二十 / 二十四節気」・文 杉岡茂を再編集)