2年先の資金繰り表を作る。手元の現金が尽きる月を先に知る
「毎月の入出金はだいたい頭に入っている。でも半年先、1年先のお金の動きは、正直よく分からない」。相談に来た社長からよく聞く話です。ある建設会社の社長も、同じことで悩んでいました。今日は、その相談をもとに、2年先の資金繰り表の作り方を考えてみます。
損益ではなく、現金の出入りだけで見る
資金繰り表と聞くと、決算書の延長のように身構える人がいます。実際は逆です。利益が出ているかどうかは、いったん脇に置きます。見るのは「口座にいくら残るか」だけです。

売上が伸びていても、入金が遅れれば手元の現金は減ります。逆に赤字の月でも、前の月にまとまった入金があれば現金は残ります。損益計算書と資金繰り表は、似ているようで別物です。
まずは今の預金残高から始めます。そこに毎月の入金予定と出金予定を足し引きしていくだけです。難しい計算式はいりません。表計算ソフトで十分です。
月ごとに「入金合計」「出金合計」「差引残高」の3行があれば形になります。これを24か月分、横に並べます。最初は埋まらない月があって当然です。分かる範囲から書き始めてください。
先に固いものを置く
固いものというのは、金額も時期もほぼ動かない支出のことです。借入の返済、税金、賞与、保険料などが当たります。
これらは売上の増減に関係なく出ていきます。相談に来た社長の会社でも、借入返済と保険料の支払いが重なる月があり、そこが表を作って初めて見えた形でした。
税金は法人税や消費税、社会保険料など、いくつかの種類があります。支払月は業種や決算期によって変わります。顧問税理士に一度確認してもらうと、抜け漏れが減ります。
賞与も同じです。年に1回か2回、まとまった金額が出ていく月があります。この月を先に書き込んでおくと、後から慌てずに済みます。
固いものを先に埋めてから、残りの空欄に売上や仕入の見込みを入れていく。この順番を守るだけで、表の精度がだいぶ変わります。
売上の入金は締めとサイトでずらす
ここでよくあるつまずきが、売上が立った月にそのまま入金があると思い込んでしまうことです。実際は締め日と支払サイトの分だけ、ずれて入ってきます。
例えば月末締め翌月末払いの取引先なら、9月の売上は10月末に入金されます。ここを合わせずに表を作ると、月々の数字は当たりません。
たとえば年商1億円の会社だとします。取引先ごとに締めとサイトが違うなら、主要な取引先だけでも書き出しておくと、ずれの幅がつかみやすくなります。
仕入や外注費の支払いも同じです。こちらは自社が払う側なので、締めとサイトを逆から数えることになります。
入金と出金、両方のずれを表に反映させて、初めて「その月にいくら残るか」が見えてきます。ここを飛ばすと、表を作った意味が薄くなります。
いちばん薄くなる月から半年前に動く
24か月分の表ができると、残高が一番薄くなる月がどこかに出てきます。相談に来た社長の会社でも、表を作って初めてその月が分かった、という反応でした。
この月が分かれば、そこから逆算して動けます。半年前なら、借入の相談も、支払時期の調整も、まだ選択肢が残っています。
資金調達は、必要になってからでは間に合わないことが多いです。銀行に相談に行っても、審査や実行までにはそれなりの日数がかかります。手元の現金が減ってから駆け込むと、選べる手段が狭くなります。
補助金や制度融資を使える場合もあります。ただし対象条件や申請時期が決まっているものが多いので、早めに専門家や金融機関に相談しておくと安心です。
半年という余白があれば、値上げの交渉や、支払サイトの見直しといった、地味だけれど効く手も打てます。ぎりぎりになってからでは、その余白がありません。
自社に置き換えると
自社の口座残高を見て、いま何か月先まで見通せているか、考えてみてください。借入返済や税金、賞与の支払月を、カレンダーに全部書き出せるかどうかも確かめたいところです。主要な取引先の締めとサイトを、担当者以外の人が答えられるかどうかも、意外と見落とされがちな点です。
資金繰り表は、一度作って終わりではありません。月に一度、実績と見込みを書き換えていくものです。最初の1枚を作るところが一番大変ですが、そこを越えれば、先の不安の正体が数字になって見えてきます。ある建設会社の社長も、表ができた時点で「思ったより時間がある」と少し表情が緩んでいました。早く知ることは、それだけで対策の選択肢を増やしてくれます。