議決権を渡さずに株を渡す。種類株式のやさしい説明

相談に来た社長から、よくこんな話を聞きます。子どもに株を持たせたい。でも経営はまだ渡したくない。そんな時に使える仕組みが、種類株式です。

株には「お金の権利」と「口出しの権利」がある

株を1株持つと、いくつかの権利がついてきます。会社のもうけを分けてもらえます。配当の権利です。株主総会では、賛成・反対の票を入れられます。議決権です。会社をたたむ時には、残った財産を分けてもらえます。残余財産の権利です。普通の株式は、これらがぜんぶセットになっています。

多くの経営者は、この二つを分けられると考えたことがないかもしれません。配当をもらう権利と、経営を決める権利。この二つ、法律上は別のものとして扱えます。

分けて考えると、株の渡し方に幅が出ます。経営には関わらせたくないけれど、財産はきちんと分けたい。そんな場合に、権利の中身を変えた株式を発行できます。これを種類株式と呼びます。

例えば、資本金1000万円、株式1000株の会社だとします。話を分かりやすくするための仮の数字です。この会社なら、配当は多めにもらえるが議決権はない株式と、議決権はあるが配当はふつうの株式を、両方作ることができます。

配当は多く、口は出さない株式を子に渡す

相談でいちばん多いのは、この組み合わせです。配当を優先してもらえる代わりに、議決権のない株式。これを、経営に関わらない子どもに渡します。

後継者に決めた子には、ふつうの株式を渡します。議決権がある株式です。これで経営権はひとりに集中します。ほかの子どもたちには、配当優先・無議決権の株式を渡します。財産は分けつつ、会社の意思決定には関わらせません。

こうすると、経営はひとりに集め、財産はみんなに分ける、という形が作れます。普通株式だけでは、なかなか作れない形です。全部を同じ株式で分けようとすると、経営権まで細かく割れてしまいます。

ここで気になるのが税金だと思います。無議決権株式は、相続の場面で評価が下がる場合があります。ただし条件がありますし、会社の状況によっても変わります。使える場合がありますが、実際に使えるかどうかは税理士に確認してください。

普通株式 議決権 経営を決める権利 配当 お金をもらう権利 後継者 普通株式(議決権あり) ほかの子ども 配当優先・無議決権株式 黄金株(先代が保有) 重要議案にブレーキ

拒否権付きの株式、いわゆる黄金株というブレーキ

経営は子に譲る。でも危ない決定だけは止めたい。そう考える社長もいます。そこで出てくるのが、拒否権付き株式です。俗に黄金株とも呼ばれます。

仕組みはシンプルです。たった1株でも、決まった議案には反対できるようにしておきます。役員の選任・解任や、合併、定款の変更など、あらかじめ決めておいた重要な議案にだけ、この株式の持ち主の同意がいる、と定款に書いておきます。

先代の社長が引退するときに、この1株だけを手元に残しておく。ふだんの経営は後継者にまかせつつ、暴走しそうな決定にだけブレーキをかけられます。資金を出してくれる投資家が、この株式を持つケースもあるようです。

ただし気をつけたいこともあります。この1株が、相続や万一の時に誰の手に渡るかは、あらかじめ決めておく必要があります。持ちっぱなしにすると、いつまでも後継者が育たない、という声も聞きます。期限を決めて手放す約束にしておく方が、後々もめにくいようです。

定款を変えて、登記もいる。思いつきでは作れない

種類株式は、便利ですが手続きが必要です。まず定款を変えなくてはいけません。株主総会での特別決議が必要になります。すでにある株式の中身を変える場合は、実務上、株主全員の同意を取ることが多いようです。

定款を変えたら、法務局への登記も必要です。どんな種類の株式を、どんな内容で発行しているかは、登記によって外から見える形になります。取引先や金融機関から聞かれたときに、説明できるようにしておいてください。

株主名簿の書き換えや、税務署への届け出が必要になる場合もあります。設計してすぐ終わりではなく、手続きが何段階か続くと考えておいてください。司法書士や税理士と一緒に進めるのが安全です。

株の評価が変わる分、税金の計算も変わってきます。ここも税理士への確認が欠かせません。良かれと思って作った仕組みが、思わぬ税負担につながることもあるようです。

自社に置き換えると

自分の会社に当てはめて考えてみてください。経営を継がせたい相手と、財産を分けたい相手は、同じ人でしょうか、それとも違う人でしょうか。

もし違うなら、議決権と配当を分けて渡す方法が使えるかもしれません。今の株式の持ち方のままで、後継者以外の家族にも十分な財産が渡るでしょうか。

万一、後継者が判断を誤りそうな場面が来たとき、それを止める手立ては、今の株式の形の中にあるでしょうか。

種類株式は、株を「お金」と「口出し」に分けて考える道具です。難しそうに見えますが、根っこの考え方はシンプルです。まず決めるべきは、何を、誰に、どれだけ分けたいか。株の設計は、そのあとの話です。急いで定款をいじる前に、一度、専門家に今の株主構成を見てもらうところから始めてみてください。

会社の先を、考えはじめたら

後継者のこと、株のこと、社員の雇用のこと。まだ決めていない段階のご相談がいちばん多いです。社名を伏せたままで構いません。

会社を譲ることを考えはじめた方へ

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