会社を継がないと決めたとき、社員の雇用をどう考えるか

「継がない」と決めた経営者から、次によく聞かれるのは社員のことです。子どもに継がせない、社内にも継ぐ人がいない。そう決めた瞬間に、長く働いてくれた社員の顔が浮かぶという方は多いです。この記事では、雇用調整助成金や再雇用制度、高齢者雇用という言葉を手がかりに、継がないと決めた後の社員との向き合い方を整理します。

「継がない」と決めた日から、社員への向き合い方が変わります

継ぐ人がいないと決めた瞬間、経営者の頭の中は二つに分かれます。一つは今の会社をどう畳むか、または誰かに渡すか。もう一つは、その間ずっと働いてくれる社員をどうするかです。ここでつまずく人が多いです。先のことばかり考えて、目の前の社員に何も伝えられないまま時間が過ぎてしまうケースをよく見ます。

社員に何も言わないまま準備を進めると、噂だけが先に広がることがあります。辞める社員が増え、いざ譲渡先を探すときに人手が足りず、条件が悪くなることもあります。伝える時期は慎重に考える必要がありますが、黙っていれば安全というわけでもありません。

まず整理したいのは、今すぐ雇用を守る話と、数年後の着地点をどうするかという話です。この二つを同じ土俵で考えると、話がこんがらがってしまいます。

雇用調整助成金は、今をしのぐための制度です

雇用調整助成金は、景気の変動や取引先の都合で仕事が減ったときに、休業手当の一部を国が助成する制度です。継がないと決めた会社でも、今の売上が落ち込んでいるなら使える場面はあります。あくまで今の雇用を維持するための制度で、数年後に会社を畳む前提であっても、その日までの社員の生活を守るために使うことができます。

気をつけたいのは、対象になる要件や助成率、上限額が年度ごとに変わることです。2026年時点で使える内容が、来年も同じとは限りません。実際に申請するときは、必ず最新の公募要領やハローワークの案内で確認してください。

よく聞かれるのは「継がないなら申請しても意味がないのでは」という質問です。そんなことはありません。畳むにしても譲るにしても、その日まで社員の生活は続きます。今をしのぐ制度と、将来の会社の形は別の話として考えたほうが整理しやすいです。

再雇用制度と高齢者雇用は、承継の話と切り離して考える

もう一つよく相談されるのが、再雇用制度と高齢者雇用の話です。定年後も働きたいという社員がいる会社は多く、65歳までの雇用確保は法律で義務づけられています。70歳までについては努力義務という位置づけです。年齢の区切りや義務の範囲は改正されることがあるので、制度を見直すときは必ず現時点の法令で確認してください。

「継がないと決めたのに、再雇用制度を整える意味があるのか」と聞かれることがあります。意味はあります。再雇用制度がきちんと整っている会社は、譲渡先から見たときに評価が上がります。人が育っていて、長く働ける仕組みがある会社は、買う側にとって安心材料になるからです。

例えば、60代のベテラン社員が何人もいて、その人たちの知識や取引先とのつながりが会社の強みになっているとします。この場合、再雇用制度をきちんと文書にしておくことは、譲渡の交渉でも力になります。口約束のままにしないことが大事です。

譲渡先を探すなら、雇用の条件は交渉の材料になります

継がないと決めた後の選択肢は、大きく分けて廃業と譲渡(M&A)です。廃業を選ぶと、社員はその時点で新しい仕事を探すことになります。譲渡を選ぶと、条件次第で今の雇用がそのまま続く可能性があります。

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