「休み」って、そもそも何のためにあるんだろう
「休みって、そもそも何のためにあるんだろう」。真面目に考え出すと、これが意外と分からなくなります。ぼくは長いことこの問いを抱えたまま、経営をやってきました。
「休み」って、そもそも何なのか
WorkとLifeが別々のものになったときから、休みというものが生まれたんじゃないか。そんな気がしています。キリスト教、いやユダヤ教の時代にはもう、一週間のうち一日はホリデイにしなきゃいけない決まりがあったらしい。労働とプライベートを分けて、片方を休ませる。そういう発想は、たぶんずいぶん昔からあったんです。
でも、休みが要らなくなる社会になればいいと、ぼくは思っています。休みが必要という前提そのものが要らなくなればいい。労働がイヤなものでさえなくなれば、わざわざ休んで回復する必要もなくなるわけです。WorkとLifeが溶け合ってしまえばいい。そうは言っても、体を休める意味でのオフの日は、たぶんこれからも必要でしょうけど。

例えば、休みの日にふと仕事のアイデアを思いついて、つい手帳にメモしてしまう。それを「休みなのに仕事してる」と後ろめたく感じる経営者、多いんじゃないでしょうか。でもそのメモが苦じゃなくて、むしろ楽しいものだったとしたら。それはもう休みと仕事の境目なんてどうでもよくなっている状態です。皆さんの会社では、社長のその感覚、社員にどう見られていますか。
労働は「労わる」と書く
「労働」という字をよく見ると、「働く人」を「労う(ねぎらう)」と書きます。日本語のこの成り立ち、けっこう本質を突いてると思うんです。働くとは「傍(はた)を楽にする」こと。社会全体のためというより、顔の見える「誰か」のためなんですよね、この国では。
長い時間働くことに価値があるんじゃない。誰かの役に立てたかどうかが重要なんです。短時間でも、目の前の「誰か」が助かったなら、それで十分。この考え方、経営者としては地味に効きます。労働時間の長さで評価する組織と、誰の役に立ったかで評価する組織とでは、社員の顔つきがまるで違ってきます。
例えば、取引先の担当者が納期で困っている。それを深夜まで残業して助けるんじゃなくて、短い時間でパッと解決できる仕組みを作れたら。その方がよっぽど「傍を楽にする」に近いはずです。残業時間の長さを頑張りの証にしていないか、一度振り返ってみる価値はあると思います。
産業革命の再来、なのか
18世紀のイギリスで始まった産業革命は、農業社会をあざやかに工業社会へ変えました。今、世の中はIT革命だデジタル革命だと騒いでいますが、これも同じくらい大きな転換なんじゃないかと、ぼくは見ています。技術の話だと思われがちですけど、本当に変わるのは働き方と時間の使い方の方です。
産業革命のときも、きっと同じことが起きたはずです。畑仕事のリズムで生きてきた人たちが、工場の時間割に体を合わせる。最初はしんどかったでしょう。でも数世代かけて、それが当たり前になった。今度はその工業社会の時間割そのものが、また作り変えられようとしている。1日4時間働けば今と同じ生活ができる。そんな世の中が来たらいいなと、ぼくは本気で期待しています。
若者たちが教えてくれること
若い人たちが週休3日や週休4日を望むのは、自分の時間を取り戻したいからなんだと思います。休みの間、YouTubeで生活を立てることを考えている子だっているかもしれません。最初は「なんだそれは」と思いました。でも、時代の変化を一番敏感に感じ取っているのは、案外そういう若者たちなんじゃないかと、最近は思い直しています。
自由に休みを取って、デジタルを使って新しい生き方を築こうとする若者たち。おじさん世代のぼくらがやるべきことは、それを頭ごなしに否定することじゃなくて、そのマインドの変化に手を貸すことなんだろうと思うんです。
例えば、新卒の子が「土日以外にもう一日休みがほしい」と言ってきたとします。正直、最初はムッとするかもしれません。でもその奥にある時代感覚まで否定してしまうと、その子が本当に持っている力まで一緒に潰してしまう気がします。皆さんの職場は、若い世代のそういう提案を、まず聞く場になっているでしょうか。
自社に置き換えると
自社の就業規則や評価の仕組みは、まだ工業社会の「長く働いた人が偉い」を引きずっていないでしょうか。社員にとっての休みが、ただ体を休めるためだけのものになっていないか。もし社員から週休3日をやりたいと言われたら、社長として頭から断らずに、その理由をちゃんと聞けるだろうか。そんなことを、一度立ち止まって考えてみてほしいんです。
「忙しい」という字は「心を亡くす」と書きます。ぼくらが今体験しているデジタル革命が、人間が心を取り戻すためのものだったらいい。そう強く思っています。
・文 杉岡茂
(初出:逍雲夜話 2022年10月「休日」を再編集)
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