役員退職金で手取りを残す。勤続年数と非課税枠の考え方

「役員退職金 損金」「退職金 節税」で検索して、ここにたどり着いた方も多いと思います。役員報酬をそのまま増やすより、退職金として受け取るほうが手取りが残る、という話を聞いたことがあるけれど、勤続年数でどう変わるのか、会社側の損金算入はどこまで認められるのか、そこがよくわからない。周南で中小企業の相談を受けていると、ここでつまずく経営者の方をよく見かけます。今日は仕組みの基本を実務目線で整理します。

退職金にすると税負担が軽くなる理由

役員報酬を増やして受け取ると、給与所得として毎年の所得税・住民税がかかります。金額が大きくなるほど税率も上がるので、手元に残る割合はどんどん減っていきます。

退職金は扱いが違います。退職所得という区分になり、ほかの所得と分けて計算する分離課税です。しかも、受け取った金額そのものに税金がかかるわけではなく、あとで説明する非課税枠(退職所得控除)を引いた残りの、さらに半分だけが課税対象になります。同じ金額を受け取るなら、報酬より退職金のほうが税負担は軽くなりやすい、というのはこの仕組みによるものです。

ここまでは制度の基本の考え方で、2026年時点の話です。税率や控除の細かい数字は毎年のように見直しが入るので、実際に金額を計算するときは必ず最新の税制と顧問税理士の確認を通してください。

勤続年数で非課税枠(退職所得控除)がどう変わるか

退職所得控除の額は、勤続年数で決まります。2026年時点の考え方では、勤続20年以下の部分は1年につき40万円、20年を超えた部分は1年につき70万円で計算します。最低でも80万円は非課税枠として確保される仕組みです。

例えば、25年間役員として勤めた方だとします。最初の20年は40万円×20年で800万円、残り5年は70万円×5年で350万円、合わせて1150万円までが非課税枠です。この金額を超えた分の、さらに半分だけが課税の対象になります。

ポイントは、20年を境に非課税枠の伸び方が変わるところです。長く勤めた役員ほど、退職金にできる非課税の範囲が広がっていきます。逆に言うと、勤続年数が短いうちに大きな退職金を出そうとすると、非課税枠の外に出る部分が増えて、思ったより税金が残ることもあります。

退職所得控除(非課税枠)の増え方のイメージ 勤続年数 非課税枠 20年 40年 800万円(目安) 1150万円(目安・25年) 40万円×年 70万円×年 20年を境に、非課税枠の増え方が変わります

会社側は損金算入できる、ただし上限がある

会社の側から見ると、役員退職金は原則として損金に算入できます。利益が出ている年に大きな損金を計上できるので、法人税の負担を抑える効果があり、これが「退職金 節税」「節税 中小企業」というキーワードで検索される理由のひとつだと思います。

ただし、いくらでも損金にできるわけではありません。税務上は「不相当に高額」と判断された部分は損金として認められません。実務では功績倍率法という考え方がよく使われます。最終月額報酬に、在任年数と役職に応じた倍率をかけて、適正な金額の目安を出す方法です。倍率の水準や計算の細かい扱いは会社の状況によって変わるので、ここは税理士と一緒に確認する部分です。

手続きの面でも順番があります。退職金規程を整備しておくこと、株主総会や取締役会での決議を経ること、議事録を残しておくこと。ここを飛ばして支給すると、あとで損金算入を否認されるリスクが出てきます。

分掌変更で退職金を出すときに気をつけたいこと

代表取締役から会長や相談役に退くタイミングで、退職金を支給したいという相談もよくあります。分掌変更による退職金という扱いです。

ここで気をつけたいのは、名目だけ肩書きを変えて、実質は今までどおり経営の意思決定をしている場合です。税務上、実質的に退職したと認められないと、退職金として損金算入できない可能性があります。代表権をなくす、報酬を大きく下げる、経営の実権を後任に移す、こうした実態が伴っているかどうかが見られます。

事業承継のタイミングで分掌変更を検討する会社は多いです。形だけ整えるのではなく、実際にどこまで権限を渡すかを、承継計画とあわせて考えておくと、あとで揉めにくくなります。

自社に置き換えると

ここまでの話を自社に当てはめるなら、まず確認したいのは役員の在任年数です。何年勤めていて、非課税枠はいくらになりそうか、大まかにでも計算してみてください。

次に、今の退職金規程が整っているか、功績倍率の考え方が会社の実態に合っているか。規程が古いまま放置されている会社は少なくありません。

もうひとつ、退職金を出すタイミングは事業承継の計画と重なっていないか。分掌変更を伴うなら、実権をどこまで渡すかも合わせて考える必要があります。

合同会社RYDEENでは、こうした退職金の設計や事業承継のタイミングについて、税理士など専門家と連携しながら、経営者の方と一緒に整理するお手伝いをしています。数字を組み立てる前の「何から確認すればいいか」の段階からご相談いただけます。

会社の先を、考えはじめたら

後継者のこと、株のこと、社員の雇用のこと。まだ決めていない段階のご相談がいちばん多いです。社名を伏せたままで構いません。

会社を譲ることを考えはじめた方へ


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