後継者がいない会社はどうする?親族内・従業員・第三者・廃業を比べる

「うちには継ぐ人がいない」。経営者からこの言葉を聞く機会が増えました。子どもは県外で仕事を持っていて戻る様子がない、娘婿に継いでほしいが本人が乗り気じゃない、社内を見渡しても後を任せられる人が見つからない。理由は会社によって違いますが、後継者不在という状態そのものは、もう珍しい話ではありません。この記事では、後継者がいない会社が実際に選べる道を、親族内・従業員・第三者・廃業の四つに分けて並べます。

後継者不在は珍しい話ではありません

中小企業の後継者不在について、帝国データバンクなどの調査で「経営者の半数近くが後継者未定」といった数字が出ることがあります。ただし年によって調査結果は変わりますので、正確な割合を知りたい場合は、その年の最新の調査を確認してください。ここで言いたいのは、後継者不在は特別な会社だけの悩みではないということです。

業種で言うと、建設業、設備工事、電気工事、金属加工、製造業、水産加工、運送業、卸売業、小売業、印刷業、農業法人、自動車整備、理美容、飲食店、旅館、ホテル、不動産業、IT企業、士業事務所、学習塾、保育園、介護事業所、クリニック、歯科医院。どの業種からも、後継者に関する相談を受けます。

地域で言うと、周南市、下松市、光市、新南陽、徳山といった地元はもちろん、岩国市、柳井市、田布施町、平生町、上関町、和木町、防府市、山口市、宇部市、山陽小野田市、下関市、萩市、長門市、美祢市、周防大島町、阿武町。山口県内の各地、そして中国地方から西日本全体まで、同じような声を聞きます。

後継者がいない会社が取れる道は、大きく分けて四つです。子や親族に継いでもらう親族内承継、社員に継いでもらう従業員承継、社外の会社や個人に譲る第三者承継、そして継がずに畳む廃業。どれが正解ということはなく、会社の状況によって向き不向きがあります。

選択肢1 親族内承継 — 一番身近だが、実は難しい

親族内承継は、多くの経営者が最初に思い浮かべる選択肢です。子どもや娘婿、甥や姪など、身内に会社を継いでもらう方法です。従業員や取引先の理解も得やすく、名前も変わらないので、一番自然な形に見えます。

ただ、ここでつまずく人が多いです。継ぐ本人にその気がない場合が一番多いパターンです。ほかにも、株式や自宅を後継者一人に集中させると、ほかの相続人との間で不公平感が出て揉める、経営には向いているが専門知識が足りず現場で苦労する、といった壁が出てきます。後継者育成には5年から10年かかると言われることもあり、思い立ってすぐにできることではありません。

例えば、社長が65歳で息子が35歳だとします。今から現場を経験させ、取引先に顔を覚えてもらい、資金繰りや人事の判断を少しずつ任せていくとしても、代表交代までに数年はかかります。逆に言うと、後継者がいる会社ほど、早めに動き始めています。

親族内承継を選ぶなら、まず本人の意思を確認すること、株式の分け方を早めに考えておくことが欠かせません。ここは税理士や弁護士の専門領域も関わってきますので、税務や法律の判断が必要な部分は、その都度専門家に確認しながら進めることになります。

選択肢2 従業員承継(MBO)— 現場を知る人に託す

身内に継ぐ人がいない場合、次に出てくるのが従業員承継です。長年働いてきた番頭格の社員や、現場をよく知る幹部に会社を託す方法で、MBO(マネジメント・バイアウト)と呼ばれることもあります。中小企業のMBOという言葉で検索する方も増えました。

従業員承継のいいところは、業務や取引先のことをすでに理解している人が継ぐという点です。引き継ぎの手間が親族内承継や第三者承継より少なく済むことが多いです。従業員側から見ても、雇われの立場から経営者になれるという意味で、キャリアの選択肢が広がります。

一方で壁になりやすいのが、株式を買い取るお金です。社長個人が持っている自社株を、社員個人が買い取るとなると、数百万円から数千万円の資金が必要になる場合があります。日本政策金融公庫の制度融資など使える仕組みはありますが、要件や融資枠は年度で変わりますので、検討する時点の最新の情報を金融機関に確認してください。

「継いでほしい人はいるけれど、お金の壁で話が進まない」というのは、よく聞く相談です。ここは早い段階で、資金計画も含めて一緒に整理していくことが必要になります。

選択肢3 第三者承継(M&A)— 親族にも社内にもいない場合

親族にも社内にも後継者がいない場合、会社ごと社外に譲る第三者承継、いわゆるM&Aという選択肢が出てきます。親族外承継と呼ばれることもあります。同業他社が買い手になることもあれば、異業種の会社が新規参入の形で買うこともあります。

「M&Aは大企業の話」というイメージを持っている経営者は今も多いです。ですが、従業員数人から数十人規模の会社の譲渡は、実際にはよくあります。会社を存続させたい、従業員の雇用を守りたい、自分は引退したいけれど会社は残したい、という希望を叶える手段として選ばれています。

進め方としては、まず自社の状況を整理し、譲渡できる状態かどうかを確認するところから始まります。売上や利益だけでなく、借入金、不動産、許認可、従業員の状況なども見ていきます。そのうえで買い手を探し、条件を詰め、契約という流れになります。ここで税務上の判断や契約書の作成が必要な場面が出てきますが、税務代理や書類の代理作成そのものは税理士や弁護士など専門家の領域です。私たちのような支援者は、経営者と専門家の間に入って、話を整理する役目を担います。

第三者承継を考え始めるタイミングは、早いほど選択肢が広がります。「もう限界だから急いで売りたい」という状態より、時間の余裕がある段階の方が、条件面でも交渉しやすくなります。

選択肢4 廃業という決断 — 手続きと注意点

親族内承継、従業員承継、第三者承継、どれも難しいと判断した場合、廃業という選択肢も現実にあります。廃業は逃げでも失敗でもなく、経営者が下す一つの決断です。ただ、廃業手続きは思っている以上に時間がかかります。

大まかな流れとしては、株主総会での解散決議、解散登記、清算人の選任、官報での公告、債権者への催告期間、税務署や県税事務所への異動届出、従業員への説明と退職の手続き、取引先への挨拶、資産の処分と債務の整理、最後に清算結了の登記、という順番になります。官報公告から債権者への催告には最低2か月の期間を置く必要があり、全体では半年から1年程度かかることが多いです。実際の手続きは会社の状況によって変わりますので、進める際は税理士や司法書士など専門家と一緒に進めることになります。

廃業を選ぶ場合でも、従業員の再就職先を探す時間や、取引先への説明の順番など、人との関係を丁寧に扱う部分は変わりません。「畳むと決めたから終わり」ではなく、畳み方にも段取りがあります。

後継者がいない会社

親族内承継 子・親族へ

従業員承継 MBO・社員へ

第三者承継 M&A・社外へ

廃業 畳むという選択

早く動くほど、選べる道は多く残ります

中小企業の、味方でいたい

周南の9人の若者が、地元の中小企業の現場に入って一緒に考えます。若者・バカ者・よそ者の会社です。

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