M&Aのデューデリジェンスで見られる10のポイントと進め方

M&Aを進めていくと、必ずデューデリジェンスという言葉にぶつかります。財務や法務の専門家が会社の中身を細かく調べる作業だと聞いて、何をそんなに見られるのか、うちの会社は大丈夫かと不安になる経営者は多いです。基本合意を結んだあと、最終契約に進む前のこの期間に何をチェックされ、どこで指摘が出やすいのか。よく相談を受ける内容をもとに整理します。

デューデリジェンスとは何をする作業か

デューデリジェンス(DD)は、譲渡を検討している会社の財務・法務・労務・事業の状態を、買い手側が専門家を入れて確認する作業です。略してDDと呼ばれることが多いです。公認会計士や税理士が財務・税務を、弁護士が法務・労務を担当し、それぞれ数日から数週間かけて資料を確認します。

目的は粗探しではありません。買い手は、提示している価格が妥当かどうか、契約後に想定外のリスクを引き継がないかを確かめたいだけです。指摘が出たからといって、その場で破談になるとは限りません。

実施のタイミングは、基本合意を結んだあとが一般的です。基本合意の前は、まだ譲渡条件が固まっていないので、細かい資料まで出す必要はありません。

秘密保持契約と基本合意で決まること

M&Aの話が動き出すと、最初に交わすのが秘密保持契約です。売り手の売上や取引先の情報は、社外に漏れると経営に響きます。相手先候補と話を始める前に、必ず結んでおく書類です。

そこから条件のすり合わせが進み、ある程度の合意ができた段階で基本合意を結びます。基本合意には、想定している譲渡価格の範囲、今後のスケジュール、独占交渉権(一定期間、他の相手と交渉しないという約束)などが書かれます。ここでの価格はあくまで目安です。デューデリジェンスの結果によって、上下することがあります。

基本合意の多くは、法的な拘束力を持たない条項が中心です。独占交渉権や秘密保持の部分だけ拘束力を持たせる形が一般的です。この違いを知らずに「もう決まった話」と思い込んでしまう経営者もいます。

財務・税務でよく指摘される点

財務のDDでは、決算書の数字と会社の実態にズレがないかを見られます。ここでつまずく会社は少なくありません。

ひとつ目は簿外債務です。例えば、退職金の引当金を積んでいなかったり、未払いの残業代があったりすると、決算書に出てこない負債として指摘されます。ふたつ目は在庫の評価です。棚卸資産の中に、何年も動いていない不良在庫が含まれていないか確認されます。三つ目は売掛金です。回収の見込みが薄い取引先の売掛金が、資産として計上されたままになっていないかが見られます。

四つ目は、オーナーと会社の間のお金の動きです。役員への貸付金や、私的な経費が会社の経費に混ざっていないか。中小企業ではよくあることですが、DDでは必ず洗い出されます。五つ目は税務申告の内容です。消費税や源泉徴収の未納、過去の申告のズレが見つかると、譲渡価格の見直しにつながることがあります。

法務・労務でよく指摘される点

財務以外の指摘も、価格や契約条件に影響します。

六つ目は労務まわりです。未払い残業代や、36協定を結ばずに残業させている状態は、よく指摘される点です。従業員数が少ない会社ほど、この整備が後回しになりがちです。七つ目は許認可です。建設業や運送業など、許認可が事業の前提になっている業種では、その許認可を新しい体制で引き継げるかどうかが焦点になります。名義変更が必要な場合、手続きに時間がかかることもあります。

八つ目は取引先との契約です。契約書の中に、経営者が変わったら契約を解除できるという条項(チェンジオブコントロール条項と呼ばれます)が入っていないか確認されます。入っていると、取引先に事前の同意を取る必要が出てきます。九つ目は訴訟やクレームです。過去に係争があった場合、その内容と今後のリスクが確認されます。十番目は知的財産や使用しているシステムのライセンスです。ソフトウェアのライセンスが個人名義になっていたり、商標の登録が漏れていたりすることもあります。

指摘が出たら最終契約はどうなるか

デューデリジェンスで指摘が出ても、そこで終わりではありません。多くの場合、指摘内容をもとに最終契約の条件を調整して進めます。

調整の方法はいくつかあります。譲渡価格を見直す、簿外債務にあたる分を売り手が事前に精算する、契約書の中に表明保証(決算書や資料の内容が正しいと約束する条項)と補償条項を入れる、といったやり方です。指摘の内容が重ければ交渉が長引きますし、時には破談になることもあります。ただ、事前に自社の状態を把握して整理しておけば、指摘そのものを減らせます。

最終契約の締結後は、決められた期日に株式や事業の引き渡しと対価の支払いが行われます(クロージングと呼ばれます)。ここまで来ると、あとは引き継ぎの実務が中心になります。

自社に置き換えると

ここまで読んで、自分の会社ではどうだろうと思った方も多いと思います。決算書に載っていない負債や約束ごとは残っていないか。労務まわりの書類、残業代の計算や36協定は今の実態に合っているか。取引先との契約書に、経営者交代を理由に解除できる条項が入っていないか。一度、この3つだけでも確認してみてください。

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